伝統の「酸っぱい梅干し」が消える!法改正で全国の自宅兼製造場が存続の危機、立ち上がった「梅ボーイズ」に聞く
■ 絶滅の危機に瀕する伝統的な梅干し 「梅ボーイズの梅干しもそうですが、改正食品衛生法で廃業のリスクにさらされるのは『しょっぱくて、酸っぱい』梅干しをつくる業者が中心です。塩漬けする、果実のような梅の風味がダイレクトに出るのが伝統的な梅干しなのです」 そもそも、梅干しの規格には、梅と食塩のみの無添加で加工する「梅干し」と、保存料を入れた「調味梅干し」の2種類がある。 ただ、山本氏によると、市場規模はしょっぱい「梅干し」が甘い「調味梅干し」の9分の1ほどと大きな差があるという。 なぜ、伝統的な梅干しは売れなくなったのか。 「保存がきく伝統的な梅干しが主流でなくなったのは、減塩が健康に良いとされ始めたことがきっかけだと言われています。昔ながらの梅干しの塩分濃度は15%程度と、1桁台の調味梅干と比較すると高い。約40年前から蜂蜜などに漬けた梅干しの勢力が拡大し、今の若い人にとっては『梅干しは甘いもの』というイメージが定着しているほどです」 「それでも我々の顧客も、クラファンの支援者も『しょっぱくて酸っぱい』梅干しの味にノスタルジーを感じているのは、それを祖父母の家で食べた、という記憶が残っているからこそ。食品メーカーに梅を卸すほどの資金を持たない農家が廃業すると、伝統的な梅干しの継承者がいなくなってしまうリスクすらあるのです」(山本氏) また、山本氏は、現在はみなべ町においても、無添加の梅干しを製造する農家が減少傾向にあると言い、最盛期は自前で生産した梅を天日干しまでしていた農家が一定数存在したものの、現在は食品メーカーが加工プロセスの全てを担い、農家からは生梅を購入するのが一般的になっているという。 市場規模の大きさを考えると、食品メーカーも無添加の梅干しの製造に参入はしづらい。伝統的な梅干しの加工の担い手がいなくなってしまうと、「しょっぱくて、酸っぱい」梅干しは絶滅してしまうリスクもあるのだ。