パンダやコアラを飼ったらいくらかかる? エサ代や環境を整えるだけで月数十万~数百万円かかる動物とおカネの実状を元動物園の獣医師・北澤功さんが解説!
野生動物をウチで飼ったら、エサ代はいくらかかる? 元動物園の獣医師の北澤功さんが、動物にかかるおカネについて解説! 【図版】コアラを飼ったら1カ月いくらかかる? 最近、ペットの飼育にかかる費用が高くなっていると言われるが、野生動物の飼育にかかるお金はその比ではない。なかには、1カ月に数百万円単位のお金がかかっている動物も! 今回は『妄想お金ガイド パンダを飼ったらかかる? 』の著者で、獣医師の北澤功さんに、知られざる”動物とおカネ“の実状を聞いた ●地球では、1時間に4種ずつ野生動物が絶滅している! 野生動物について知ってもらい、その生態を守るアクションを広げたい ──北澤さんが書いた『妄想お金ガイド パンダを飼ったらいくらかかる? 』を面白く拝読しました。ジャイアントパンダを飼うには1カ月で約650万円もかかるなど、具体的な金額で“夢をかなえるための値段”を示されています。なぜ、この本を書こうと思ったのですか? 北澤 「野生動物にもっと興味を持ってもらいたい」という素朴な思いが、そもそもの出発点です。あまり知られていませんが、いま地球では、1時間に4種ずつ野生動物が絶滅しているんです。1日あたりだと、約100種もの野生動物たちが消えてしまっているんですよ。 もちろん、すべてが人間の仕業ではありませんが、開発による環境破壊や地球温暖化などが、何らかの悪影響を及ぼしていることは事実です。地球からの大切な預かり物である野生動物たちにもっと興味を持ってもらえば、「環境破壊に繋がりかねないアクションはやめよう」という行動変容が起こり、消えていく種を1つでも減らせるかもしれない。 そこで、誰もが一度は膨らませる「パンダやコアラをウチで飼ってみたい」という妄想を、なるべく現実的に具体化してみようと思ったのです。野生動物たちのユニークでデリケートな生態を知れば、動物園でただ眺めるだけよりも身近に感じるでしょう。「こんなに楽しくてかわいい動物たちを、何とか守ってやりたい」という気持ちが高まるはずです。 ──それにしても驚いたのは、野生動物を飼うのに、ものすごくおカネがかかることです。小型動物のコアラでも、1カ月の餌代が1匹66万円もかかるそうじゃないですか。 北澤 コアラは、ユーカリしか食べない偏食家ですからね。生まれ故郷のオーストラリアはユーカリの木が茂っているけれど、日本にはないので、自分で木を植え、育てるところから始めるしかありません。面倒なうえに、かなりの出費となるので、現実的に飼うのは不可能です。 でも「かわいいけど、そんなに手間やおカネがかかる動物なのか? 」ということを知るだけでも楽しいし、野生動物への愛着も深まるんじゃないでしょうか。 ──おカネがかかるだけじゃなく、相当な気遣いが必要だと思ったのがジャイアントパンダです。 北澤 ジャイアントパンダは、中国からお預かりする“国賓”ですからね。一般家庭に中国から貸し出されることは100%あり得ませんが、仮に飼えたとしても、気楽にじゃれあったりすることはできません。 万が一、ケガをしたり病気になったりしたら、謝罪どころでは済まず、国と国との問題にまで発展しかねないわけですから(笑)。 ──北澤さんが飼ってみたい野生動物は何ですか? 北澤 キリンかな。動物園で働いていたときによく餌をあげましたが、意外と人懐っこくて、慣れるとすり寄ってくるんです。でも、飼うには3階まで吹き抜けのあるような家が必要なんです。違う意味で現実的じゃありませんね(笑)。 ●動物の生態を知ればペットの健康を維持し、少ない費用で飼える! 与えるエサや日々の運動などに気を配ろう! ──ところで、最近はペット医療の高度化や、インフレによる餌代の値上がりなどで、ペットの飼育にかかる支出も増えていますね。犬1匹あたりの年間支出は約35万円、猫は約16万円という調査結果もあります。 北澤 最近では、MRIなどの先端医療機器や、高い医薬を使って治療する動物病院も増えていますからね。がん治療などでは、200万円ぐらいかかることだってありますよ。 都会では、犬・猫などペットの種類ごとに動物病院があるし、外科、内科、眼科、歯科など、診療科ごとの専門医がいるのが当たり前になっています。専門的な治療を受ければ、当然ながら費用も高くなります。 ──どうすれば、ペットの医療費を抑えることができるでしょうか? 北澤 まずは、僕のような“何でも屋”の獣医に見てもらって、治せるものは治してしまう。ダメなら専門の病院を紹介してもらうというのが、安上がりに済ませるコツでしょうね。 ただし、専門的な病院のほうが道具や薬はそろっているので、おカネはかかるけど、しっかり治してくれるメリットはあります。肝心なのは「どこまでおカネをかけられるのか」を正直に伝えること。いい獣医なら、予算の範囲内でベストな選択肢を提示してくれるはずですよ。 ──そもそもペットが健康なら、医療費もさほどかかりません。その意味では、与える餌や運動にも気を使ったほうがよさそうですね。 北澤 おっしゃるとおり。つい安物を選んで与えている飼い主もいらっしゃると思いますが、値段が安いフードはタンパク質含有量が少ないので、食べ続けると筋肉や抵抗力が落ちてしまう。なので、フード購入前に成分表を確認しましょう。おカネをかけずにペットの健康を保ちたいなら、安いフードにタンパク質が豊富な鶏のささ身や胸肉を混ぜて、栄養価をプラスしてみてはどうでしょうか。 ──創意工夫を凝らせば、ペットの健康を安上がりに維持することができるというわけですね。 北澤 僕自身、東京で動物病院を開く前に長野の動物園で獣医をしていたときは、創意工夫の連続でした。動物園の餌代の高さは、家庭のペットフード代とは比べ物になりません。 たとえば、コノハズクという小さなフクロウの仲間は、虫を餌にしているのですが、栄養価が高い虫は手に入りにくく、値段も高い。そこで、栄養価の低い虫に動物の肉を食べさせ、栄養たっぷりにしてから与えていました。ただ手間とお金がかかるので昆虫食のコノハズクにヒヨコの肉を細かく砕いて与えてみたところ、おいしそうに食べて元気になったという成功体験があります。 餌の質はもちろん、おなかいっぱいになり過ぎない程度に、量を与えてあげることも大切です。最近は、マニュアル通りに餌を与える飼い主が増えている。マニュアル通りに餌を与えても、満足に食べられず、やせ細ってしまうペットも少なくない。マニュアルに縛られず、十分食べているか? 元気に活動しているか? といった、その子なりの状態を観察し、柔軟に接してあげるべきです。 ──ちなみに、北澤さんが動物園を辞めて、動物病院の院長になったきっかけは何だったのですか? 北澤 新しいことにチャレンジしにくい動物園だったので、もっと自由に活動したいと思ったのが最大の理由ですね。園長になろうと思い、そのための組織づくりをしていることがバレて、動物園を追い出された。それでいまの動物病院の経営を受け継いだんです。おかげで、今回の本のように面白い仕事ができるようになったので、辞めてよかったと思いますよ。 ──最後にペットを飼っている皆さんにメッセージをお願いします。 北澤 ペットが元気なら、飼い主も体を動かすので健康になるものです。互いの幸福のためにも、日ごろからしっかり面倒を見てあげてください。
ザイ編集部
【関連記事】
- ■渋沢栄一が遺した“3つの名言”の意味を、栄一の玄孫にあたる「コモンズ投信」の渋澤健さんが解説! 7月に発行される新1万円札はタンス貯金せずに有効に使え!?
- ■芸人・ゴミ清掃員のマシンガンズ滝沢さんが実感した「富裕層と一般家庭のお金の使い方の違い」とは? 富裕層は自己投資し、一般の人は他人にお金をかけている
- ■医師・作家の鎌田實さんが75歳での今も活躍できるのは“貯金より貯筋”のおかげ? 地方の赤字病院の再生や紛争地での医療支援活動に取り組んできた理由を直撃
- ■投資家・テスタさんが考える「億り人になるための5つの心構え」とは? 累計利益100億円突破の達人は、株をギャンブルと捉えず、強い意志で継続することを重視
- ■高額な"薄毛治療"の効果を専門家が解説! ミノキシジルが配合された市販の発毛剤や、内服薬、頭皮注射、マッサージなどの薄毛治療は本当に効果があるのか?