「やるからには振り切る」農園2代目は髪をネギ色に染めた SNSで拡散したオリジナル加工品
茨城県常陸太田市の栗原農園は、水耕栽培による小ネギを軸に、サラダ野菜や米の生産・販売などを手がけています。2代目社長の栗原玄樹さん(37)は、栽培品目の選択と集中を進め、効率化の工夫で従業員の労働時間を減らしました。コロナ禍を機に、小ネギの加工品「ネギキムチ」をヒットさせようと、自身の前髪をネギ色に染め、インフルエンサーとなって、SNSを効果的に使った販路拡大に成功。会社全体の売り上げを3倍に伸ばし、次世代の農業経営を切り開いています。 【写真特集】キャラクターの力で成長した中小企業
「農家の子」から「経営者」へ
栗原農園は作付面積は約30ヘクタールで、従業員数は25人。地域の農家としては有数の規模で、年商は現在1億6千万円にのぼります。 栗原さんの父親は1993年、農協職員から独立して農業を始めました。栗原さんは両親が営む農園を当たり前のように見て育ちます。兄はパン職人を志し、栗原さんも料理人の道に進むつもりでした。「農家を継げとも言われず、農家だからと引け目を感じることもなく、やりたいことはやらせてもらいました」 高校卒業後、東京の服部栄養専門学校に進み、レストランでアルバイトをしました。この経験が農業への関心につながります。「実家から(店に)野菜を取り寄せることになり、食材の品質が料理のおいしさを左右することを実感しました。生産者としての責任や可能性を、初めて考えるようになりました」 父に家業を継ぐ決意を伝えると、「お前が30歳になったら社長を交代する」と宣言されました。栗原さんは2006年、茨城県立農業大学校に進むと同時に栗原農園で働き始めました。 当時の売り上げは約5千万円。栗原さんが家業に戻るころ、野菜の需要の高まりもあって、父は借り入れを増やしハウスを増設。3年から5年おきに投資していました。父から「1人2千万円の売り上げが必要」と言われ、規模拡大の必要性を感じます。 「最初は何も分からず、ただ言われた通りに作業をこなすだけでした。でも、次第に『もっと効率的な方法はないか』と考えるようになりました」 この時、栗原さんは20歳。「農家の子」から「農業経営者」へのタイムリミットは10年でした。