JR東日本の小田栄駅開業で注目「戦略的新駅」ってなに?
「戦略的新駅」自治体が連携で利便性向上はかる
これに対し、小田栄駅は「戦略的新駅」という新しい考え方にもとづいて設置された駅である。聞き慣れない言葉だが、JR東日本が2012年に発表したグループ経営構想の中で「鉄道と街、お客さまとの接点を増やし、さらなる利便性向上と利用拡大を図るため、事業を多角的に検証し、地元自治体などとの連携による具体化を図る」と書かれている。 JR東日本に聞いてみると、「当社(JR東日本)と自治体が連携することで、地元だけ・JRだけで動くよりも、駅とまちづくりの連携や利便性向上、利用拡大に早期に寄与できると判断したケースを、戦略的新駅と位置付けている」とのこと。つまり、JRがまちづくりについてさらに踏み込み、自治体とタッグを組んでスピーディに新駅を設置しようというわけだ。また、設置費用についてもJRと自治体が折半している。
なぜ、小田栄駅なのか
ところで、なぜ「戦略的新駅」の第1弾が小田栄駅だったのか。その答えは、2015年1月にJR東日本と川崎市の間で交わされた「包括連携協定」にある。これは、両者が「鉄道」と「まち」を共に発展させるために連携・協働しようというもので「鉄道と沿線のブランド向上」「地域の暮らしの安全・安心の向上」「低炭素化・スマート化」「公共交通の利用促進」の4つを柱としている。 わかりやすくいえば、南武線とその沿線の魅力を増やすための取り組みをJRと川崎市が共同でやっていこうということだ。この中で、現在開発が進んでいる小田栄地区について、今後の発展を見越して作ることになったのが小田栄駅というわけである。 協定が結ばれた約半年後の同年8月には駅新設の許認可が下り、翌2016年3月には開業という、異例の早さも特徴だ。さらに駅の設置費用は約5.5億円と、従来より一桁少ない。 この”破格の安さ”を実現できた理由は主に2つある。1つは、踏切や信号機の改修費用を極力抑えるために、上り線ホームと下り線ホームを別々に設置したこと。そして2つめは、同様に運賃計算システムの改修費用を節約するため、運賃計算上は小田栄駅を隣の川崎新町駅と同じ駅という扱いにしたことである。 例えば東京駅から小田栄駅へ行く場合は、東京駅から川崎新町駅への切符を購入することになる。こうすることで、運賃計算システムへ小田栄駅に関する設定を新たに組み込む必要がなくなり、大幅なコストダウンが可能となった。 なお余談だが、小田栄駅から川崎新町駅へ行く、あるいは逆の場合は、運賃計算上は同じ駅(川崎新町駅)で乗降することになるため、ICカードの利用ができず切符を買わなければならない。