「椅子対局」世代だけど、正座対局の厳かな雰囲気にもあこがれ[千春&明夏の女流棋士ここだけの話]
こんにちは。囲碁棋士の塚田千春です。プロ棋士の対局と聞くと、皆さんは正座と椅子、どちらを思い浮かべますか? 多くの方は、タイトル戦のような和室での正座を想像されるかもしれません。しかし、実際には、プロ棋士のほとんどの対局は椅子で行われています。 【写真】碁会所で碁を打つ子ども時代の塚田二段
棋院での手合の多くや国際大会では椅子対局が一般的
椅子対局は、特に棋院での手合の多くや国際大会で一般的です。いまは日常生活でも椅子に座ることが多いですし、なじみがある分、長時間の集中を保ちやすい気がします。
一方、伝統的な和室での正座対局には独特の緊張感や厳かな雰囲気があります。特にタイトル戦や重要な一局は、正座での対局が多く、その姿からは、棋士の気迫や精神力の高さが伝わってきます。
ちなみに正座姿がめちゃくちゃかっこいい井山裕太王座は椅子対局が非常に少なく、正座での対局がほとんどです。
井山王座は、関西総本部内でもトップの序列を持つため、棋院での対局の場合は格式高い「無量の間」が主な対局場となるからです。正座対局に慣れていらっしゃる井山王座は、対局中も全く辛(つら)そうに見えませんし、すさまじい集中力を感じます。
修業時代から椅子対局が主流、記録係の時は正座椅子で
私も無量の間で井山王座の記録係を務めさせていただくことがありますが、正座が苦手な私は正座椅子を使っています。正座椅子があると脚にかかる重さが多少軽減されるので、足の痺(しび)れ方が全く違い、私にとって無量の間では欠かせないアイテムになっています。背が低い私が、飛び抜けて背が高く見えてしまうのが玉に瑕(きず)なのですが……。
ただ、タイトル戦の記録係では荷物になるため正座椅子は持参できず、その場合は足の痺れとの闘いになります。私より少し上の世代の棋士たちは、修業時代から正座対局に慣れているため平気なようですが、私の世代は修業時代から椅子対局が主流だったため、正座には慣れていない棋士も多く、皆どこか辛そうです(笑)。正座のコツ、誰かに教えてもらいたいなぁ。
正座対局も椅子対局も、それぞれに魅力があるのですが、私もいつかはあの厳かな雰囲気の中、脚じゃなくて心が痺れるような碁を打ちたいと思います。そのために精進します!