<インド・炭鉱>燃える大地 ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
「そっちは危ないから歩かないように!沈んじゃうぞ!」 渇いた地面の裂け目から燃え上がる青白い炎を撮ろうと、足を踏み出した時だった。この場所に連れてきてくれた子供たちが、僕に向かって叫んだ。 フォト・ジャーナル <インド・炭鉱>- 高橋邦典 第26回
炎は、地下で燃える石炭から発せられたものだ。広範囲にわたるこの地下火災によって地盤沈下が引き起こされることもあり、これまでいくつもの村が崩壊の憂き目にあった。この丘陵も、人々の住む村のすぐ脇にあるので、子供たちも簡単に足を踏み入れることができる。危ないなあとも思うが、そう遠くない将来、村自体が沈下してしまうかもしれない。 そんな憂慮とは裏腹に、夕暮れの空が紫色に染まるなか「燃える大地」は、幻想的な光景をつくりだしていた。足元から立ち昇ってくる熱気を感じながら、僕はこの非現実的な風景に見とれずにはいられなかった。 (2014年12月) ---------------- 高橋邦典 フォトジャーナリスト 宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。 Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.