「純粋に投手との対戦を楽しめた」代打を〝主戦場〟としたソフトバンク中村晃、今季の記憶に残る1打席があった
ソフトバンク選手が今季を振り返る年末恒例プレーバック企画「鷹戦士あのプレー」。今回は中村晃内野手(35)をピックアップします。今季は主に代打での出場を強いられ、101試合の出場で打率2割2分1厘、0本塁打、16打点。不本意となったシーズンを悔やんだ一方で、9月21日の楽天戦(みずほペイペイドーム)で対戦した則本昂大との打席に思いをはせた。 ■「あの小さかった真凜ちゃんが…」秋山幸二さん長女が花嫁姿【写真】 「もっとできたんじゃないか。今年はそんな思いが強く残る1年でした。主に代打を任されるようになって、難しさもあったんじゃないかと言ってくれる人もいますが、200打席くらい(計203打席)はもらっているので、そこは関係ないかなと。すべては自分の技術不足。それに尽きると思います」 中村晃は一切言い訳することなく、プロ17年目を戦い終えた今季を振り返った。昨季までは一塁手として4年連続でゴールデングラブ賞を受賞。不動のレギュラーとして常勝チームを支えたが、今季は西武からFA移籍してきた山川穂高に押し出される形で控えに回り、代打が主な〝働き場〟となった。 当然、慣れない役回りに苦しみ、2年ぶりに規定打席を割った。オフの契約更改では5000万円減の大幅減俸(年俸1億円プラス出来高でサイン)も食らった。「いろいろな立ち位置の選手がいるのがプロ野球の世界ですから。今年に関しては野球の技術が上達することはなかったかもしれないけど、人としての修行はできたかな。人生、修行ですよ」と卑屈な姿を見せない。これこそが中村晃の魅力だろう。 そんな男が今季、何より印象に残った打席に則本との対戦を挙げた。9月21日の本拠地戦。1点を追う最終9回1死一、二塁の絶好機で回ってきた打席だった。この時は代打での登場ではなく、5番一塁手として先発出場しての4打席目だった。それまでの打席は3打席凡退といいところがなかった。ここで楽天の守護神を攻略すれば同点、場合によってはサヨナラ打と一気に主役に立てる場面だったが、空振り三振と最悪の結果に終わった。 当然、球場中からため息が漏れ、中村晃も悔しさに打ちひしがれた。一方で、一野球選手として投手との対決を楽しめた打席でもあったようだ。「ファウルで粘って、打てる球を待って。結果は期待を裏切るものになり申し訳なさが勝ったけど、純粋に投手との対戦を楽しめた」。2ストライクに追い込まれてから3球もファウルで粘り、最終的にフルカウントまでもっていったところが、いかにも「しぶとさ」を売りとする中村晃らしい打席だった。肝心の試合は、続く代打柳町達の逆転二塁打でチームはサヨナラ勝ちを収めた。 好機での凡退は褒められるものではない。ただ、それをも超越した対戦がプロ野球の世界には存在する。そんな限られた者だけに許された至極の戦いを、来季も全力でファンに届ける覚悟だ。 (石田泰隆) 【#OTTOソフトバンク情報】
西日本新聞社