社説:学習指導要領 学校裁量を増やすよう
学校現場が主体性や工夫を真に生かせられるよう、踏み込んだ議論を求めたい。 小中高校で学ぶ内容や授業時間数を定める学習指導要領の改定を、阿部俊子文部科学相が中教審に諮問した。2026年度中に答申し、新しい指導要領に基づく授業は30年度以降となる。 多様な子どもに対応できるよう、学校現場の裁量を広げ、教育課程の柔軟化の検討を求めた。1こまの授業時間を5分短縮して生じた余剰時間を、個別学習や探究的な学びに充てることなどを想定しているという。各年ごとで学ぶ内容区分を弾力化し、それぞれの理解度に応じた授業を受けられることも視野に入れる。 画一的な教育から脱し、各学校の課題に即した対応を取れるかが問われる。 日本の子どもは国際的に学力は高いものの、自律的に学ぶ意欲が低いと指摘される。不登校の小中学生が過去最多に上り、日本語指導が必要な子も増加、発達障害の可能性のある子も一定数いる。それぞれの主体的な学びを育む場が求められている。 ただ、新たな枠にはめて裁量が限定的では困る。柔軟に余裕を生むには従来授業の見直しが欠かせない。学力低下への懸念もあるだろう。 近年の要領改定を巡っては「ゆとり教育」での学力低下批判を受けて以降、教科書のページ数や年間標準授業数が増加してきた。前回は小学校高学年で英語が教科化。教員と子どもへの過度な負担が指摘されてきた。 しかし諮問は、年間の授業数について、「現在以上に増加させない」との表現にとどまった。 生成人工知能(AI)などに対応する情報モラルやメディアリテラシーの教育強化も新たに打ち出され、現場の重荷は増えるばかりだ。 学習内容の精査や時間数の減少も、学校の事情に応じて柔軟であるべきではないか。最低基準としている学習指導要領の在り方も問われている。 諮問では、教員の資質向上や人材確保策の検討も求めた。教員課程を取らなかった人が大学院で教員免許を取得できる仕組みなどを考える。 月平均残業時間が国指針の上限45時間を超えた教諭は、中学校で4割超、過労死ラインの80時間超も8%いるなど、長時間労働が深刻となっている。 教員の多すぎる業務の精査が必要だろう。