『二月の勝者』著者が見た令和の中学受験の「リアル」親世代の受験との違い|VERY
中学受験の「リアル」を描いて累計360万部突破の人気漫画『二月の勝者』。作者・高瀬志帆さんに、取材裏話や作品に込めた想いをお聞きします。今回は「中受ブーム」といわれる今の受験事情、ベストの入塾時期など受験生の親が考えておきたいことを伺いました。(『二月の勝者-絶対合格の教室-』©高瀬志帆/小学館)
過熱する中学受験を取材して感じたこと
(『二月の勝者-絶対合格の教室-』©高瀬志帆/小学館) ――NaVYやVERYの取材で小学生ママとお話しすると、大袈裟ではなく全員と言っていいほど『二月の勝者』を読んでいて、漫画のように熱い受験をしなきゃとか、低学年から塾に行った方がいいんじゃないかと焦るママも多くて、その影響力の大きさに驚かされます。 高瀬志帆さん(以下、敬称略):そんなふうに読んでいただいているんですね、ちょっと意外です。 ――中学受験の表も裏もリアルに描いているだけでなく、親の悩みや葛藤もすごくありのままに表現されているのが共感を集める理由だと思うのですが、ここまで生々しく描けるのはなぜだろうということと、中学受験を題材にしようと思ったきっかけをお聞きしたいです。 高瀬:数年前に日経DUALという媒体で中学受験が題材の、原作付きの連載をやらせていただいたのが、中学受験との出会いでした。それまでもなんとなく、遅くまで勉強している子どもがいるな、という認識はありましたが、原作を読んで、「え、こんなことになっていたのか!」というのが最初の印象で。その連載の終了後に、「中学受験」はお仕事漫画として成り立つんじゃないかと思ったんです。医師や教師の漫画はあっても中学受験講師の漫画はないのではないか、と担当編集さんに相談したら、面白そうですね、と言ってくださって。題材が決まってから、『週刊ビッグコミックスピリッツ』の連載というフォーマットに落とし込むために、数年かけて、取材も含めて準備をした感じです。 ――大学受験を題材にした漫画は今までもありましたが、確かに中学受験というのが新鮮でした。取材をしてみて、率直に今の中学受験にどんな印象をお持ちになりましたか? 高瀬:やっぱり親御さんの負荷がすごく大きいですよね。保護者の方たちに取材をすると、自分が受験した頃はもっとゆっくりだったとか、小5から塾に通い始めたとか。あとは塾友ができたりご褒美にシールをもらえたりもっと楽しい感じだったと振り返られます。そういう環境で勉強をして、自分の行きたい学校に行けたとおっしゃる方がすごく多いんですけど、最近はそういう雰囲気が変わってきていて、一部過熱してしまう構造ができているように感じています。それは誰かがどこかで煽っているとか、具体的に何が悪い、とかではなく、おそらく世間や社会のムードが原因なのではと思います。昨今の社会情勢だとどうしても将来が不安になりますよね。そこで大人が子どもにしてあげられることの一つが中学受験なのだとは思いますが、不安が大きくなりすぎて親御さんが追い詰められるとあまりいいことはないように思います。ただ、それも親御さんのせいではなくて、社会全体の雰囲気がそうさせてしまっている気がします。