【解説】元巫女や弓の達人も!天皇皇后両陛下イギリスご訪問にも同行 両陛下を守る“皇宮護衛官”の仕事とは?
弓道に打ち込む決意
最初は弓を強く感じてうまく引けなかったが、練習を重ねてインターハイにも出場した。だが3年生の時に優勝候補と言われながら自分の調子が悪くて惨敗したことをきっかけに、「これでは終われない」と弓道に打ち込む決意をしたという。 北海道の大学に進学して実力を磨き、公務員志望だったこともあり、弓道場があって競技を続けられる皇宮警察に進むことにした。 ところが大学を卒業し、採用直前だった2011年3月、実家に帰省している時に東日本大震災が発生し、福島第一原発事故の影響で、当時実家で営んでいた酪農ができなくなった。根本さんは東京に行ってもいいのか迷ったという。 根本百合子さん: その時、父が「ここにいても何も変わらないから」と背中を押してくれました。 弓道は28メートル先の肩幅ほどの的を狙う。試合では2本1組の矢をあわせて4本引いて、何本当たったかを競う。 根本百合子さん: 的に当たっても外れても顔には出さないし、ガッツポーズもしません。何があっても動じないことが大切で、仕事にも通じると思います。弓道を続けることでメンタルが強くなりました。 普段は吹上護衛署で署内の業務にあたっているが、一般公開している皇居東御苑に派遣されて、トラブル対応や外国人観光客の道案内をすることもある。東御苑で6月に行われた皇宮警察音楽隊のコンサートでは司会も任された。 弓道の試合がないときは、勤務のあと週に数回、2~3時間練習する。 根本百合子さん: 弓道は好きなことだし、仕事でもあるので一生付き合っていきたいと思います。 これからも国体を目指しながら、若い部員も増えているので、後輩を育てていきたいと話す。 取材の日も4本の矢を引いて、見事3本が命中した。1本目が外れた後、調整したそうだ。 根本百合子さん: きょうは70点です。「正射必中」正しい形をつくれば必ず当たると思っています。 弓道部の後輩で赤坂護衛署の橋本郁也さんも弓道を続けるために、皇宮護衛官となった。 橋本郁也さん: 弓道は中学1年からやっていて、済寧館で弓道をすることは名誉だと思っていました。 根本さんのことはインターネットのニュースで国体優勝の皇宮護衛官がいることを知り、自分も同じように打ち込みたいと思ったという。 橋本郁也さん: 弓道に男女別はないので、みんな平等で実力次第です。根本さんは技術もあって試合にも強い。自分の目標ですが、いつか乗り越えて最高峰の天皇杯をとりたいと思っています。
何もない状況でも平常心を保つ
道場で弓道を教える百々忠利さんは「弓道と皇宮護衛官の仕事」についてこう話す。 百々忠利さん: 皇宮護衛官は、一般の警察官のように犯人の逮捕やトラブルの対応をすることは、多くはありません。常に守りの警備をしています。何もない状況でも平常心を保つ気持ちの強さ、忍耐力が必要で、自分との戦いです。だからこそ、そこに通じる弓道が正課になっているのだと思います。【フジテレビ解説委員室 特別解説委員 青木良樹】
青木良樹