【コラム】ずっと待ち続けた“強過ぎるバルセロナ”の復活!このクラブを知らないフリックが仕掛けた素敵な裏切り
■ヤマルの扱いから見えるフリックの人柄
そして、フリックのラミン・ヤマルの扱いについても言及しなくてはならないだろう。ヤマルはバルサ、ひいてはフットボール界の一時代を築く運命を背負っている。その才能をバルサのトップチームに持ち込んだのはチャビだったが、次にフリックが彼の歩む道をつくっていかなければならない。だがドイツ人指揮官はこの17歳FWの才能に頼りきりになることなく、規律と厳しさを忘れず、“チームの若手選手の一人”として適切に扱い、適切な出場時間を与えている。 ドイツ人指揮官は真面目かつ公正であり、能力主義を貫く人物だ。彼はギュンドアンが退団しても、テア・シュテーゲン、フレンキー・デ・ヨング、アラウホが負傷しても言い訳をせず、ほかの選手たちへの信頼を強調してきた。だからこそ皆が彼の決断を受け入れて、全力で競争に臨んでいる。チーム全体が再評価されたのは奇跡のようで、必然だった。
■何も知らず、すべてを理解していた男
カタルーニャ語もスペイン語も話さないフリックは、この地では性格がうかがい知れない人物であり、影が薄い。しかし彼が今のバルサというチームにどれだけ大きな作用を及ぼしているかは、手に取るように分かる。 今回のクラシコで勝っても負けても、いつか批判の声は聞こえてくるだろう。バルサの“エントルノ”は、たった1秒でもあれば監督を天国から地獄に引きずり下ろしてしまう。あなたのバルセロナサポーターの友人が、すぐ罵詈雑言を並べることからも分かる通り、このクラブは自己破壊的な存在として成り立っているのだ。 しかし少なくとも今、バルサは笑っている。フリックのチームが良いプレーを、本当に良いプレーを見せて、その帰結として勝利しているために。今夏、フリックの招聘に納得する人はごく少数で、当の本人はそんなバルサの事情や“エントルノ”について、まったく知らないままやってきた。だが何をすべきかを誰よりも理解していたのは、この“期待外れ”の新指揮官にほかならなかったのだ。