【ソフトバンク】「ポスト甲斐」常勝軍団復権のカギ プロ野球12球団担当記者が見た 2024年
「ポスト甲斐」のダークホースは育成捕手
リーグ連覇を目指すチームとして来季は、甲斐の穴をいかにして埋めるかが最大のテーマになる。 こうした事態を見越した上で、海野は自己最多の51試合に出場し、2024年から捕手専念となった谷川原健太(27)は2軍の主戦捕手として起用された。 ベテランとなる嶺井博希(33)や、育成出身の大型捕手・渡邉陸(24)、さらに状況次第では城島健司CBO(48)が「将来的にはメジャーでプレーできるくらい、スケールのでかいキャッチャーになってほしい」と才能にほれ込む育成の盛島稜大(20)にもチャンスが巡る可能性もある。 「育成のホークス」を掲げる球団の腕の見せどころでもある。 ただ、大きな期待をかけられながらも育成選手が1軍の舞台で活躍するチャンスを手にすることはたやすくない。 ホークスは12球団唯一の4軍制を敷き、育成選手だけでも50人規模の戦力を抱えている。 育成選手は1軍での出場はかなわないのは当然ながら、2軍戦でも1試合で5人までの出場に限られている。支配下登録への道を拓く前に、2軍でアピールする場をつかむための競争もし烈を極める。 このオフは、その過酷さがあらわになることもあった。 激しいサバイバルを勝ち抜き初めて2桁の背番号を背負った仲田慶介(25)、三浦瑞樹(25)が戦力外通告を受けた。2人はホークスから再び育成契約での打診を受けたものの仲田は西武で、三浦は中日で新たなスタートを切る道を選んだ。 また、ドラフトで育成指名した高校生が入団を辞退するケースも生じ球団内外に衝撃を与えた。
つきまとう「常勝」と「育成」の葛藤
「常勝」と「育成」を追い求める球団は補強の手を緩めることもしない。 このオフは、石川柊太(33)も国内FA権を行使してロッテに移籍し先発陣が手薄になる中で、レッドソックス傘下3AからFAになった上沢直之(30)を獲得した。 投打の戦力の充実ぶりは、来季も球界屈指であることに違いない。 こうした状況下において、若手選手はポジションを争うタイミングに巡り合えるかどうかが、キャリアを大きく分かつことも事実だ。 ただ、球団はこれまでも育成選手が支配下登録される条件として「1軍で戦力になると判断し場合」と一貫した基準を示している。プロ野球の世界で生き抜くには、1軍の舞台でいかに実力を発揮できるかが勝負でもある。 育成入団選手として初のメジャーリーガーとなったメッツの千賀滉大(31)が、かつて語っていた言葉が思い出される。 千賀滉大: 「入った時に、このチームで活躍するには日本代表クラスにならないといけないと思った。目標設定が分かりやすかった」 同期入団である甲斐もまた、肩の強さを印象付け第3捕手から出場機会を増やしていった。 「常勝」を宿命づけられた球団で、ポジションをつかみとるには突き抜けるほかない。大舞台でマスクをかぶり続けた絶対的な存在が抜けた今、捕手陣にとってはもちろん、ホークスにとっても大きな分岐点となりそうだ。 (文・鎌田真一郎)
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