相次ぐ企業や有名人の謝罪会見 なぜ増えてきた?
謝罪会見で“炎上”しないために
しかし、謝罪会見を開いたことで不祥事を起こした企業や個人の不安や不満が解消するとは言い切れません。謝罪会見がきっかけとなり、さらなる批判を生むというケースも多々あります。もともと、謝罪会見は突発的なトラブルが起きた際に実施するもので、通常の記者会見と違い、会見をする側に十分な情報が整っていない場合が多いものです。現在進行形で事故が起きている中での会見もあります。情報が不足することで、記者からの質問に十分な説明をできないことも少なくありません。 また「事実を確認している段階のため詳細を話すことができない」ことを、記者が「情報を隠している」と思うケースもあります。隠しているのか、本当に知らないのか、まだ言える段階にないのか、記者は質問を繰り返しつつ、会見者の表情や話しぶりから見極めようとします。こうして、泥縄的な記者会見がさらなる批判を浴びるという構造につながることもあります。 「場当たり的な謝罪会見はうまくいきません。会見する側も、会見を開く目的を明確に持っていないと、記者からの質問に対して、その場しのぎの発言に終始することになり、最終的には、感情的になったり、責任回避の姿勢を見せたり、フリーズ(思考停止状態)に陥ってしまいます。クライシスが起きて、情報が不十分な状況で会見を開かなければならないという判断をする時もあるでしょう。その時は、説明や謝罪を『求められているからする』という受け身の姿勢ではなく、会見の目的とパブリックに伝えるべきメッセージを明確にした上で主体性を持って会見を行なうことが重要です」 謝罪会見はある種のパフォーマンスの現場で、そこに意味はない、と冷めた見方をすると、炎上が起き、企業価値も信用も失うこともあります。誰に何を伝えるのか、を考え、会見以外にもレポートや電話対応などさまざまな手法で、利害関係者に説明責任を果たしていくことが重要だと井口さんは指摘します。
また、井口さんは危機管理をサポートする立場として、次のように話しています。 「会見の間、記者の背後には被害者、消費者をはじめとした、ステークホルダーがいるということを、“会見の最後まで”意識していただきたいと思います。記者と会話するのでなく、その先の方々に説明するという気持ちを持つことで、伝えるべきことを伝えるべき人へ、お話できると思います」 メディア報道にもさまざまな編集方針があります。情報を受け取る側としては、可能であれば、関心がある不祥事に関しては複数のメディアから情報を取るように心がけるのもいいでしょう。