映画史上もっとも“スカッとする”結末は? 最高のクライマックス(2)誰もが騙される…鮮やかすぎる結末
日常のモヤモヤを吹き飛ばす。それも映画ならではの効能の1つだろう。 今回は、巧みなストーリー構成と大胆な演出で、観終わった後にスカッと気持ち良くなる海外映画を5本セレクトし、物語の内容から作品の魅力に至るまでたっぷりと紹介。映画史に残る名作をラインナップした。第2回。(文・阿部早苗)
『スティング』(1973)
上映時間:129分 監督:ジョージ・ロイ・ヒル 脚本:デヴィッド・S・ウォード 出演:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、ロバート・ショウ、チャールズ・ダーニング 【作品内容】 仲間のルーサーをギャングのロネガン(ロバート・ショウ)に殺された詐欺師のフッカー(ロバート・レッドフォード)は、伝説の詐欺師ゴンドーフ(ポール・ニューマン)に復讐を依頼。ゴンドーフは、ルーサーの敵討ちをするため詐欺師仲間を集めてロネガンから大金を巻き上げようと計画する。 【注目ポイント】 第46回アカデミー賞で作品賞を受賞し、2005年にはアメリカ国立フィルム登録簿に選出されたコンゲームものの代表作。同じジョージ・ロイ・ヒル監督による名作『明日に向かって撃て』(1969年)で共演した名優ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの再共演も話題を集め、興行的にも成功を収めた。 舞台は1936年のシカゴ。ギャングの手下モットーラを騙したことで詐欺師のフッカー(ロバート・レッドフォード)と師匠にあたるルーサーはギャングに目を付けられ、やがてルーサーは大物ギャング・ロネガンの手下によって殺されてしまう。フッカーは、かつてルーサーから紹介された伝説の詐欺師ゴンドーフ(ポール・ニューマン)とともに、詐欺師らしい方法でロネガンへの復讐を企てる。 本作の魅力は何と言っても、作り込まれたシナリオとラストの大どんでん返しだろう。ポーカーでゴンドーフに負かされ機嫌を損ねたロネガンに接触したフッカーは、ロネガンに儲け話を持ちかける。そして偽の賭博場に誘い出し、ロネガンが大金を賭けるまで勝たせ続ける。 一方、これまでフッカーの詐欺行為を見逃す代わりに金を受け取っていた刑事のスナイダーは、FBI捜査官のポークが追っているゴンドーフの逮捕に協力するようフッカーに伝える。映画は観客にフッカーがゴンドーフを裏切るのではないかとほのめかす。ここから映画史に残る素晴らしいクライマックスが訪れる。 ついにロネガンが大金を賭ける。すると、賭博場にスナイダーとポークがゴンドーフ逮捕のために現れる。フッカーの裏切りを察知したゴンドーフは彼に発砲。一方でポークはすかさずゴンドーフを撃つ。その場に倒れ込むフッカーとゴンドーフ。主役2人があっけなく撃たれる展開に観る者は呆気にとられる。 程なくしてポークはスナイダーにロネガンを店の外に連れ出すように指示する。賭博場にはロネガンの現金が残される。 まさかのバッドエンドかと思いきや、実は、FBI捜査官の格好をしたポークはゴンドーフの詐欺師仲間であった。刑事のスナイダーも騙されていたのだ。もちろん、フッカーとゴンドーフに向けられた銃は空砲。ロネガンの金を手に入れた2人は詐欺師らしい復讐劇を成し遂げるのだ。 巧妙な手口に騙される。映画史上最もスカッとするラストシーンと言っていいだろう。 (文・阿部早苗)
阿部早苗