パリオリンピック男子バレー 石川祐希を「ひとりにしてはいけない」窮地で見せたチームの修正力
スパイクを1本で無理に決めにいこうとせずに、幾度でもリバウンドをとって流れを引き寄せる。そんな泥臭いプレーが大塚の最大の持ち味だ。 「VNLは自分の力で獲った銀メダルという気持ちが大きかったです。しっかり力を見せられた結果で、自信になった大会でした。パリ五輪でも、どういう形で出場するかはわかりませんが、自分が入った時の雰囲気もチームは理解できたと思いますし、途中から入った時にはこれまでどおり、ムードを変えられるようにプレーするだけです」(大塚) 第3セットからの大塚投入が、グループ予選突破を大きく引き寄せたと言っていいだろう。 【アルゼンチン戦でセッター関田誠大のトスに変化】 アメリカ戦はセットカウント1-3で敗れ、グループ予選の成績は1勝2敗。で今大会、「史上最強」と言われている日本代表だが、なぜここまでギリギリでの予選通過になったのか。 まず、初戦のドイツ戦に敗れたことが大きい。世界ランキングはパリ五輪開催前の時点で日本が2位、ドイツが11位だったが、現状、男子バレーボールは世界ランキング10位くらいまでのチームはどこが勝ってもおかしくないほど力が拮抗している。それだけに油断は禁物だった。 しかし、オリンピック初戦という緊張感と「油断してはいけない」という慎重さからか、試合開始早々、日本らしくないプレーが目立った。第1セット序盤、髙橋藍がリバウンドを狙ったスパイクを打つが、返ってきたボールが2名の選手の間にポトリと落ちる。これまでの日本であれば難なくつないで、自軍のチャンスボールにできていたはずだ。つないだボールをスパイカーが決め、日本に有利な展開を作ることで勝ってきたチームである。 その後、VNLの日本戦には出場していなかったドイツのギョルギ・グロゼルの連続サーブで失点するなど主導権を握られた。第2、第3セットを奪い返し、第4セットは28-28までもつれるものの、最後は石川が2連続でスパイクをミス。第5セットも奪われ、波に乗りきれないうちに試合が終わってしまった感が強い。 続くアルゼンチン戦では、セッター関田誠大のトスワークに変化が見られる。決定率が上がらない石川を含め、アウトサイドヒッター陣に負担が少ない状況で決めさせようとしたのか、序盤から積極的にクイックを多用して相手ブロックを翻弄した。