原作コミックの『広島編』を描く、菅田将暉主演の映画『ミステリと言う勿れ』
はまり役の、演技巧者なキャストたち
謎解きの面白さは勿論だが、整がそれぞれのキャラクターに言う言葉が、人生訓のように心に残る。例えば、『子どもの心はセメントみたいで、そこに何らかの跡が残ればそのまま固まって後々まで心の傷になる』といったことや、『女性の幸福と言われている言葉は、おじさんの趣味や願望から出てきたものが多い』という言葉には、納得する人も多いのではないか。整は科学的な側面から物事を考えるのではなく、鋭い観察眼と心理学的な側面から真実を導き出していくタイプで、そこに単なるミステリものにはない人間ドラマとしての魅力がある。 今回の映画でも膨大なセリフをしゃべり続ける菅田将暉が好演していて、生徒に熱く自分の考えを語りかけるTV『3年A組─今から皆さんは、人質です』(2019)の教師役もそうだが、彼ほどしゃべることで説得力が増す俳優は稀。その一方で哀しみや喜びを湛えた繊細な感情表現も、人付き合いが下手な整の雰囲気をよく出している。また整を事件に巻き込む汐路を演じた原菜乃華は、謎を秘めた少女という難役に体当たりで挑んでいるし、他の遺産相続者を演じた3人も敵か味方かわからない親族の距離感を、絶妙に出して印象的。他にもTVシリーズで整と不思議な友情で結ばれた逃亡犯の我路(永山瑛太)が冒頭とラストに登場。またTVで整と一緒に事件を解決する大隣署の刑事たち(伊藤沙莉、尾上松也、筒井道隆)も姿を見せるので、ドラマからのファンも見逃せない。
ファン必見の特典映像が満載!
今回発売されるソフトでは通常版には【予告編集】と【CM集】が、豪華版には松下洸平をゲストに迎え、菅田将暉がパーソナリティーを務めた特別番組【菅田将暉のラジオと言う勿れ】完全版をはじめ、出演者のオフショットやインタビューも収めた【メイキング】、初日舞台挨拶など5つの公開イベントを収録した【イベント映像集】が特典映像として収められている。メイキングやイベント映像を観ると共演者たちの仲の良さがよくわかるが、中でも初日舞台挨拶では出演者それぞれが、見て欲しい“推し”のポイントを語っているので、そこに注目して本編を観るとさらに面白さが増すだろう。 もうひとつ、映画の公開前に放送された「ミステリと言う勿れ特別編」のBlu-rayとDVDも現在好評発売中。こちらは整が志尊淳演じる大学の友人と、廃校になった校舎のどこかに30年前埋められたタイムカプセルを探すバイトをする内容で、ゲストは前述の志尊淳以外には、篠原涼子と塚地武雅。映画と合わせて観ると、より整の人間的な魅力がわかる一編になっている。 文=金澤誠 制作=キネマ旬報社
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