捨てるトマトの茎や葉、無駄なく食器に変身 新潟出身女性、北海道に移住して起業
北海道美瑛町のベンチャー企業「AgReturn(アグリターン)」が、トマトの栽培過程で捨てられる茎や葉などの「残渣(ざんさ)」を原料に使い、使用後は堆肥にもなる食器を販売している。代表取締役の原直子さん(47)は3年前に東京から移住。農場で働くうち、茎や葉が大量に捨てられることを知り、活用できないかと考えて起業した。「現場で感じた『もったいない』を生かしたい」と話す。(共同通信=石黒真彩) 食器は平皿、深皿、小鉢、スプーン、フォークの5点セット(税抜き1800円)。原料は約3割が町内の農家から回収し乾燥・粉砕した茎や葉で、残りは針葉樹パルプ。加工は主に外部に委託している。 原さんは新潟県出身。テレビ番組のディレクターが前職で、やりがいはあったが、子育てとの両立に悩んでいた2020年に新型コロナウイルスが流行。スキーが好きで旭川市周辺に住みたいと思っていた夫と話し合い、21年に隣接する美瑛町に移住した。
町内の農業法人で働き、摘み取られた茎や葉が農場の隅に山のように捨てられているのを目の当たりにした。養分を実に行き渡らせるためだが、「同僚ももったいないと思っていた」。周囲の声も後押しとなり、製品開発を思い付いた。 木材や古紙を原料にする成型品「パルプモールド」を扱う複数の企業に相談し、東京の企業などの協力を得て、23年にアグリターンを設立した。 食器は耐久性があり、今年1月に町内のイベントでお汁粉やピザをのせる皿を提供すると、来場者から「普通の紙皿と比べるとくたっとしない。安定感がある」などと評判だったという。トマトの茎や葉を原料に使った名刺も製作できる。 今後は農家を訪問するツアーや、環境をテーマにしたワークショップなど、体験を提供する事業も計画中。原さんは「活動を通して農業の現状を知り、野菜を大切に食べてもらうきっかけをつくれたらうれしい」と話した。