片岡愛之助さん 50代の目標は?『翔んで埼玉』『ルパン三世』いま最もアツい人気歌舞伎俳優の展望
歌舞伎だけでなく、直近では舞台『西遊記』、映像作品では『翔んで埼玉~琵琶湖より愛を込めて~』などの話題作に次々と出演し、それぞれの作品で新たな一面を見せてくれる片岡愛之助。新作歌舞伎として上演される『流白浪燦星(ルパン三世)』では、時代を超えた人気キャラクター、ルパン三世を演じている。 【写真】片岡愛之助さん扮するルパン三世 そんな彼に、俳優としても充実している“今”の心境について伺った。
──2023年は4年ぶりに出石永楽館で「第十三回永楽館歌舞伎」が上演されました。久しぶりに見た舞台からの景色はいかがでしたか? 永楽館(明治34年開館)は芝居小屋で、歌舞伎というものの原点であることを改めて実感しました。かつては照明がなくて蝋燭で舞台を照らしていたとか、江戸時代にタイムスリップしたような気分を味わうことができます。今までいろんな演目を上演させていただいてきましたが、実はアンケートで一番人気の演目は「口上」なんです。演目とは言えないのですが、襲名披露公演の改まった口上とは違っていて、お客さまとの言葉のキャッチボールやご当地の話題などが喜ばれているようです(笑)。 ──コロナ禍を経て、ご自身を取り巻く環境で、何が一番変わったと思われますか? 2023年9月に市川團十郎襲名披露公演が福岡で行われました際に(中村)芝翫のお兄様からお声がけいただいて、同世代の人たちと食事をする機会がありました。そのときに皆で語り合ったのですが、コロナ禍で、何人か名だたる先輩が亡くなられましたことで、僕たちの世代は大きな変化を迎えたと思います。自分ではまだまだ若いと思っていますが、気がつけば51歳。歌舞伎界では40、50代は“はなたれ小僧”なので自分のことをまだ若手だという認識でしたが、僕たちもたくさん頑張らなければならない状況になりました。コロナ禍になる前は先輩方が昼夜の部で一本ずつ演し物の主役をなさっていて、僕らの世代は脇で演じるというのが当たり前でしたが、今はそうは言っていられません。僕らの仕事は正解もなければ、終わりもない。一生修行をし続ける訳です。 それと同時に、僕らの世代はこれからの歌舞伎を観てくださるお客様を見つけなくてはなりません。ご年配のお客さまの中には、コロナ禍以降ご家族に止められて観劇に来られなくなった方もいらっしゃるそうで、客席もなかなか埋まらないことがあるんです。だからこそ新しいお客様にご覧いただくために、僕たちも育っていかないといけません。まずは歌舞伎をご覧いただくこと。新作歌舞伎『流白浪燦星』は、そのきっかけとしてふさわしい演目だと思います。 ──50代を迎え、人としても俳優としても円熟した時期をお過ごしと思います。俳優として掲げる目標があれば教えてください。 50代の目標としては、海外公演を実現させたいです。僕はその年代ごとに自分なりに一つの目標を決めて達成してきたのですが、今は海外で歌舞伎を上演したいと考えています。 今は具体的にどこに行きたいということまでは考えてはいません。ご縁もありますし、自分の意志だけで決まることでもないですし、演目についても場所によってふさわしいものは違うと思っています。劇場なのか、それとも屋外という可能性もありますし、あるいはもしかすれば王宮ということもあるかもしれない(笑)。そうした海外ならではの場所なのか、行く土地と舞台が決まったらその場所にふさわしい演目を考えたいと思います。
新作歌舞伎『流白浪燦星』 会場:新橋演舞場 住所:東京都中央区銀座6丁目18-2 上演日程:2023年12月5日(火)~25日(月) 11日、18日は休演 13日夜の部貸切 問い合わせ:チケットホン松竹 TEL. 0570-000-489 チケットWeb松竹 (出演) 片岡愛之助、尾上松也、市川笑三郎、市川笑也、市川中車、尾上右近、中村鷹之資、市川寿猿、市川猿弥、坂東彌十郎ほか。 (スタッフ) 原作:モンキー・パンチ 脚本・演出:戸部和久 BY SHION YAMASHITA