恐ろしい…ルイ14世が密かに〈ヴェルサイユ住み貴族〉へ課した“フランス版参勤交代”
「貴族の財政を握ること」こそ、厳しいドレスコードの目的
実は、ルイ14世は貴族たちに全身コーディネートを継続する経済力がないことをよく理解していました。貴族たちにわざと浪費させ借金漬けにし、財政をコントロールすることで、自身の権力を確固たるものにしていたのです。 さらに残念なことに、当時の高価な服は清潔に保つのは難しく、洗濯することもできませんでした。高額な服を着回しできるほど持っていない貴族も多かったので、その結果、同じものばかり着ることになり、衣服からはかなりの悪臭が漂いました。
フランスが「ファッションの中心地」になったのも、ルイ14世の戦略
ところで1782年、アメリカの政治家であるジョン・アダムズが、パリに旅行する人にこんなアドバイスをしました。 「パリで最初にすべきこと。それは仕立て屋、かつら屋、靴屋を雇うことだ。あの国はファッションを支配しており、パリ以外の場所で作られたものは通用しないのだ」 実はこのように、フランスが唯一無二のファッションの中心地となったのは、国王ルイ14世の戦略によるものでした。彼は他国からの服飾関連の輸入をほとんど禁止しました。そして、絹、刺繍、レース、宝石、香水などあらゆるものの製造を奨励し、品質管理を徹底させました。また当時はスペインの暗い色の服が人気でしたが、それに対抗するために、あえて国王自身がメイド・イン・フランスの明るい色の一級品を身にまとい、国内外にフランスのファッションをアピールしたのです。次第に世界中で、パリの仕立て屋はヨーロッパで最も優れた存在と考えられるようになりました。 ---------------------------------- 【まりんぬ’sコメント】 ちなみにパリには現在でも数百年続く香水店やジュエリー会社があります。長きに渡って脈々と職人の技術が受け継がれ、パリがファッションの中心地として咲き続けてきた歴史を物語っていますよね! ---------------------------------- 【著者】まりんぬ 歴史系YouTuber。イギリス在住。イギリスを中心に主にヨーロッパのニッチな歴史ネタを紹介し、支持を集めている。動画は著者自らが出演、ストーリーテラーとなる形式で、中世~近代の王家・貴族から庶民の話まで、多ジャンルにわたる。ゾクッとするような内容もユーモラスかつ丁寧に解説し、女性を中心とした歴史ファンに人気。チャンネル登録者数30.1万人(2024年3月時点)。 【監修】佐藤 幸夫 代々木ゼミナール世界史講師。エジプト在住。世界史ツアーを主催しながら、年3回帰国して、大学受験の世界史の映像授業を収録している。世界102ヵ国・300以上の世界遺産を訪れた経験をスパイスに、物語的な熱く楽しく面白い映像講義を展開する。2018年からは「大人のための旅する世界史」と題して、社会人向けの世界史学び直しツアーを開催。また、オンラインセミナーとして「旅する世界史」講座を実施、世界史×旅の面白さを広げている。著書に『人生を彩る教養が身につく 旅する世界史』(KADOKAWA)などがある。