世界中に広まり続ける華人にいまなお共通する「アイデンティティ」とは…中華料理を辿って見えてきた中国人の“民族性”
境界を越えた繋がり
かつてレニングラードと呼ばれた都市で、ネバ川にかかる橋を渡っていたときのこと。反対側の歩道を中国人とおぼしき初老の男性が向こうからやってきた。 互いに会釈した後、いつもの癖で反対側に渡って男性に話しかけた。 男性はソビエト連邦時代に建てられたという自宅アパートに招待してくれた。もう成人している娘さん、結婚40年になるロシア人の奥さんも交えて夕食を楽しんだ。 やがて男性は、祖国から遠く離れたバルト海沿岸の町に流れ着いたいきさつや、ソビエト連邦時代の国際結婚は苦労の連続だったことなどを話してくれた。 このような偶然の出会いは、私の人生で貴重な瞬間だ。私たちは地理的にも、歴史的にも、政治的にもどこに境界線があるのか曖昧だが、ともかくその境界を越えて、かなり緊密につながり合っているように思える。 互いに違うことは確かだし、話す言葉もさまざまな方言があり、言語そのものが違うこともあるのだが、ある共通の価値観が存在する。 それは、家族の絆とか、中国文化や中国語教育を大切にし、何よりも中華料理に対する愛は冷めることがない。うまければ食べる。それに尽きる。 『「見た目で判断しちゃダメよ」…紹介された“全身黒ずくめにカウボーイハット”のカメラマンが厨房で見せた驚きの撮影術とは』へ続く
関 卓中(映像作家)/斎藤 栄一郎(翻訳家・ジャーナリスト)
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