会社から「計算ミスで給料を支払いすぎたので返してほしい」と言われました。もう使ってしまったので拒否したいのですが……
給与の金額は、手当の状況によって変動することもあるでしょう。 そのようななか、給与が不自然に多いことに気づかず、生活費などに充ててしまうことがあるかもしれません。 本記事では、会社側の手違いによって給与が多く支払われた場合に、どういった対応をとればよいかを解説します。
給料の過払い分については、従業員に返還の義務がある
会社側が計算ミスをして、本来の給与よりも多く従業員に支払っていた場合は、民法第703条を根拠として、従業員に対して返還請求が可能とされています。 民法第703条によれば、法律上の原因がないにもかかわらず、他人の財産や仕事において利益を受けて、他人に損失を及ぼした場合には、利益の存する限度において、返還しなければならないとされています。 会社の計算ミスによって多く支払われた金額は、従業員にとっては「本来得られなかったはずの不当な利益」です。そのため、原則として従業員は、多く支払われた分については会社へ返還しなければならないでしょう。 しかし本事例のように、給料に多く上乗せされていることに気がつかず、すでに使ってしまったという場合もあるでしょう。次では、返還する金額についてと、返還の方法についてご紹介します。
多く支払われた場合に返還する金額
多く支払われたことを知りながら、会社にいわずに使っていた場合と、知らずに使ってしまった場合では、返還の金額が異なります。 ◆多く支払われたことを知っていたが、会社に申告せずに利用した場合 民法第704条において、多く支払われた分に利息をつけて返還する必要があるとされています。利率は、同法第404条第2項に定められているように、年3%です。 ◆知らずに使ってしまっていた場合 給与明細を確認しておらず、給与が上乗せされていることに気づかなかったといった場合には、多く支払われた分の金額のみの返還が必要です。
返還の方法は?
会社に返還する場合の方法としては、以下の2つが挙げられます。 ・現金で返還する ・給与、また賞与や年末調整から差し引いてもらう 後者の方法については、労働基準法第24条において「賃金の全額支払い」が義務づけられているため、原則的には認められていないようです。 しかし、労働基準法第24条の後半には、労使協定などで過払い分の給与差し引きを認めている場合には、差し引きしてもよいと記述されています。 勤務先の労使協定も確認しながら、会社と相談することをおすすめします。会社側の計算ミスによる場合は、会社側の過失もあるため、生活に支障のないように、支払い方法を相談しましょう。