北朝鮮の核・ミサイル能力、「質的な向上に注力」と懸念-防衛白書
(ブルームバーグ): 政府は12日、2024年版の防衛白書を公表した。北朝鮮について「質的な意味での核・ミサイル能力の向上に注力」していると分析し、強い懸念を示した。
北朝鮮が新たに開発した固体燃料推進方式による大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の「火星18」の射程が1万5000キロを超える可能性を指摘。開発をさらに進展させた場合、米国に対する戦略的抑止力を確保したとの認識を「一方的に持つに至る可能性」があるとし、日本にとっても強く懸念すべき状況となりうるとの見方を明らかにした。
ロシアへの軍事装備品や弾薬の供与が行われたと「信じるに足る情報が確認」され、23年末からウクライナ侵攻での使用が明らかになったとも記述した。
政府は23年度から5年間の防衛費を従来の1.5倍の総額43兆円に増やす計画だ。北朝鮮の核・ミサイル開発などへの対応として攻撃を受けた際に敵地を反撃する能力の整備を進めている。白書は北朝鮮が発射位置の探知や迎撃が難しくなるよう、潜水艦や鉄道などからの発射を繰り返しているとも指摘し、軍事技術のさらなる進展で脅威が深刻化している現状を改めて明確にした。
中国
中国の国防費や核戦力の増強についても詳しく記述した。台湾との軍事バランスが中国側に有利な方向に急速に傾斜する形で変化しているとして、「中台間の軍事的緊張が高まる可能性も否定できない状況」と指摘した。日本周辺でのロシアとの共同活動に関し、「わが国に対する示威活動を明確に意図したもの」として重大な懸念を示した。
日本の防衛関係費に絡んでは、「物価高や円安のなか防衛力整備の一層の効率化・合理化を徹底する」必要性や、経費の精査やまとめ買い、長期契約による装備品の効率的な取得を推進すると記した。
政府は防衛費増の財源の一部は所得税などの増税で確保する方針だ。具体的な開始時期は決まっていない。こうした中、防衛省では特定秘密の漏えいや、潜水艦修理契約を巡って川崎重工側から海上自衛隊員に金品を提供した疑惑など複数の不祥事が発覚している。近く関係者を処分するが、増税への世論の反発が強まる可能性がある。
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Yuki Hagiwara