生活リズムが狂いやすい人へ。眠りにつく時間に感じる漠然とした不安を和らげるコミックエッセイ【書評】
エピソードの中で印象的だったのは、『早起きした朝にホットケーキを焼く話』だ。奇蹟的に朝早く起きられた朝に、せっかくだからとホットケーキを焼き始める。フライパンの前でフライ返しを持ちながら、かつて悩んだ「自分が普通じゃないこと」に想いを馳せていく。辛かった作者を救ったのは、母子手帳に書かれた「昼夜逆転している」という文字だった。生後1ヶ月から生活サイクルが狂っていたことを知り、これは努力で治せることじゃないと胸をなでおろす。 また、人間の中には、夜間の見張りをするために夜型の遺伝子を持つ人がいるという。眠れない夜に悩む人は、もしかしたらその遺伝子を持っているのかもしれない。たくさんの仲間を守るために見張りができるDNAだと思えば、眠れない夜にも優しくなれる気がしてくるのではないだろうか。 誰もが一度は経験したことがある「眠れない夜」には、さまざまなすごし方がある。不安でどうしようもない夜には、本作のレシピでケーキを焼いてみても良いだろう。体重や栄養管理にだけは注意して、少しでも心とお腹が満たされる夜をすごしてほしい。 文=ネゴト/ 押入れの人