「移民問題」は国益を冷静に最優先せよ 外国人だけ警戒しても意味はない…監視や規制を「性悪説」で近代化すべき
【八幡和郎 日本人の試練】 外国人労働者や移民、外国人観光客、外国人の土地取得などが話題になるが、日本人は、リベラル派も保守派も情緒的すぎる。国際常識の範囲内で、「国益を冷静に最優先すること」が大事だ。 移民は、建前より実質的利益で国籍も職種も選ぶべきだ。受け入れ関連業者や天下り先の利益に左右されず、既得権化も避けるべきだ。 IT技術者はもちろん、医師、看護師、介護系、ベビーシッターなどで、英語ができる人の導入は日本経済国際化のために不可欠だ。これは、高学歴女性への支援にもなる。特にフィリピン女性などは中東より日本で働きたがっているのだから外交上も歓迎される。中国人も不均衡に多過ぎず、管理できるなら問題ない。 外国人の観光客や不動産取得を嫌うのは愚かだ。通産省から外務省に出向してパリで勤務していたとき、アラブ人が日本に石油を売った金でパリ観光で散財したり、不動産を買っているのを目撃した。日本に観光に来させて、不動産を買わせたいと思ったが、その通りになってきてうれしい。 産業が最盛期を過ぎたら、観光や文化、不動産などで稼ぐべきだ。その収益は、産業復興の原資でもある。 景観や伝統を外国資本が大事にしないわけではない。パリ中心部にある「ホテル・リッツ・パリ」は老朽化していたのを、ダイアナ妃の交際相手、ドディ・アルファイド氏の父親(エジプトの大富豪)が買収して世界最高級ホテルに蘇らせた。プロサッカークラブ「パリ・サンジェルマン」は、カタール・マネーで世界最高クラスのチームになった。 京都では、世界的グループが進出して待望の超デラックスホテルが増えた。景観保全では建物だけ手を入れる日本人より、街区全体を整備する中国人の方がいいセンスを持っているから期待したいほどだ。 もちろん、伝統の良さを守るために、パリの高級ブランドも、ミラノのスカラ座も、地元客を確保する工夫はしているし、その重要性も否定すべきでない。金を落としてくれる外国人なしではレベル維持は無理だ。 それから、伝統文化や国家としての安全を守る場合、外国企業や外国人に注意が必要だ。だが、それを脅かす者は日本人にもいるし、外国人のダミーになる場合もある。