新型スープラと噂される『FT-1』 発売ならどんなクルマになる?
空力デザインはまだ夢の世界
FT-1の実現に向けて最も怪しいのは空力だ。特に気になる点が2点。ひとつめはリアにつけられたウイング。写真では収納された状態になっているが、通常この様なダウンフォースを発生させるデバイスは高速での安定性を担保する代わり、日常領域でも空気抵抗を増やすことになる。だからこその収納式なのだろうが、高価な可動式は得られる利得に合うかどうかが難しい。凄ければ高くて良いわけではない。千万単位のプライスを掲げるスーパーカーとはそこがはっきり違うのだ。 もうひとつはノーズ周りの造形だ。FT-1のフロント周りは最新のレーシングカーに範を採った設計になっている。ボディ下面への空気を整流して流し込むことで空気抵抗の低減と揚力の低減を同時に目指す方式だ。この方式の泣き所はナンバープレートの置き場だ。全体の空力を決める吸入口を塞ぐ形でナンバーを付ければ、空力設計のベースが崩壊する。横長のユーロ型プレートならまだしも、日米で使う縦横比がスクエア寄りのナンバーではこのデザインのどこにも収まらない。 ただし、一方では鼻先が高い位置にくるこの方式はエンジンとフードの間に隙間を設けて人身事故の際にクッションとなってダメージをコントロールする歩行者保護設計との整合性は高く、時代にマッチしている部分もある。 全体的に見ると空力はほぼレーシングカーに近い造形で、公道用のクルマとしてはかなりオーバースペックな仕様となっている感じが強い。FT-1が次期スープラとして登場する日が来るとしたら、全体のパッケージは比較的踏襲されるだろうが、ボディスキンは別のデザインになるのではないかと想像される。 いずれにせよ、ハイブリッドによる新時代のスポーツカーをトヨタはしっかり見据えている。ジャパニーズ・スポーツの復権の重要なキーのひとつはどうやらハイブリッドが握っているようだ。 (池田直渡/モータージャーナル)