堀ちえみ 57歳 舌がん手術から約5年 これまで「痛みがつきものの人生」 【菅谷大介、がんを知る】シリーズ 第4回
■舌の6割以上を切除 話せるようになるまで
家族のサポートもあり、手術は成功。しかし舌の6割以上を切除し、太ももの組織から舌を再建。新しい舌では、今まで通りに発音することができなかったそうです。 菅谷:発声練習されている映像は見たんですけど、それこそ「あ・え・い・う・え・お・あ・お」から始めてくじゃないですか。 堀:もう言葉は分かってますよね。分かっている言葉に届かないっていうもどかしさ。「あいうえお」は唇だけでなんとかなる。でも「か」は、舌が上に持ち上がっちゃうんで、抑えようと思っても下あごに収まってくれない時には、舌が邪魔して「か」って言えない。でも、母音と子音に分けて「か」という練習をして、母音にくっつけて「かぁー」と。「き」だけでも何百回じゃきかないんじゃないかなってくらい。 ひとつの音から単語へそして文章にと、時間をかけて何回も練習することで、“話すこと”ができるようになっていったといいます。
■これでよかったと思えた“子どもたちの会話”
厳しい発音の練習を続け去年2月、家族の後押しでコンサートを開催し、ライブ活動を再開しました。舌がんからの復帰に家族はとても喜んでいたといいます。 菅谷:一番印象に残っている言葉はありますか? 堀:(ライブを終えて)家に戻ったら、家族がテンションが高いわけで。特に下の娘がすごくテンションが高くて。「ファンのみなさんの顔を見てたお母さんの顔、すごくうれしそうで。よかったよね歌ってきて。今日私もすごくうれしかった」ってうれしそうで。なんでこんなにうれしそうなんだろうって思ったら、長男がライブを見に大阪から帰ってきてくれていて、「そうやな、あの時に手術を選んでよかったな。あの手術がなかったら、おかんはおらんかったし。これでよかったんや」っていう言葉を(長男が)娘にかけて。娘がうれしそうに「そうだねお兄ちゃん」っていうやりとりを見た。 堀:私が家族に接してきたことってすごく無神経だったなって思ったっていうか。家族は家族で当事者と違う観点で、非常に悩んで支えてきたんだと。そう思うと、これから先も頑張って前向きに、もっともっと前向きに生きていかないといけないなと思ったのと、生きてよかったな、これでよかったんだっていうふうにやっと思えた。