サレへ・ベンバリーによる「クロックス」 多様な視点が生み出すデザインに迫る
――「クロックス」のデザインでは、どのように機能面にこだわった?
サレへ:専門的な話になるけど、市場に出回っている「クロックス」製品の大部分は、EVAでできている。EVAは、加工しやすく環境にもいい。汎用性は高いけど、グリップ力はもう少し高い方がいいと思った。“ポーレックス クロッグ”では、既存の製品をどのように改善できるかを考えて、実際にアウトソールの前後2カ所にTPU(熱可塑性ポリウレタン)を追加した。TPUはゴムのようにしなやかな弾力性とプラスチックのような強さを併せ持った素材で、摩擦力が向上する。そのほかにも、通気性や履き心地も改良していて、そうした細かい配慮が僕のデザインなんだ。
――趣味がハイキングだと聞いた。ハイキングがデザインにもたらした影響はある?
サレへ:もしかしたらハイキングがそういった機能面にインスピレーションを与えたのかもしれないけど、シューズデザインにおいては、消費者全体のことを考えなければいけないと思っている。通勤や通学で道を歩く人がいれば、シェフで一日中立ちっぱなしの人もいる。僕は誰にでも履けるものを目指しているんだ。
――“ポーレックス クロッグ”をはじめ、あなたのデザインは新しいフォームを作ることに定評がある。新しいデザインを生み出すために最も重要なことは?
サレへ:既存の製品の隙間を見つけて、その問題を解決するためのデザインを考えることだね。デザインをすると美的感覚にとらわれすぎて、機能よりも美的感覚に負けてしまうことがあると思うけど、僕は常に両方のバランスを保つように心がけている。
――“ポーレックス クロッグ”は、“指紋”から着想を得たとか。
サレへ:そうだね。指紋を三次元的にデザインした。「クロックス」から、自分のシルエットをゼロから作ることを許されたとき、これは素晴らしいチャンスだと思ったよ。ほとんどの優れたクリエーターやデザイナー、アーティストは、一貫したブランドアイデンティティーを持っているけど、それがロゴの中に存在しなくてもいいんだって分かったんだ。“指紋”のデザインは、まさに僕のロゴのようなものだね。