謎の「鉄の棒」が出土、武器?祭器?注目集める 長さ30センチ近く先端は「ソケット状」、形や用途を解明へ
長野県原村の久保地尾根遺跡で長さが30センチ近い平安時代後期の棒状の鉄製品が出土し、文化財調査関係者の間で注目を集めている。さびに覆われており、肉眼で用途は判別できないものの、祭器や武器の可能性がある。この遺跡で鉄製品の発掘されるのは初めてで、村教育委員会は今後、用途の特定を進め、県内でも希少な出土例かどうか調べるとしている。 【写真】謎の鉄の棒が出土したのは縦3メートル、横2メートルの竪穴の中央
見つかった鉄製品は長さ27・0センチ、幅4・0センチ、厚さ2・6センチ。さびで覆われ、所々に突起がある形状をしている。片側の先端は直径1・7センチの「ソケット状」(村教委)の構造をしている。平安時代後期(10~11世紀)の遺物とみられる。
県内の奈良・平安時代の遺構や遺物に詳しい安曇野市豊科郷土博物館の原明芳館長(67)=松本市=はソケット状の部分について「鉄鐸(てったく)(鉄製の祭器)の可能性がある」と指摘。鉄鐸を含む鉄製品が複数まとまってさびついて棒状になっていることも考えられるという。「棒状のものに鉄鐸が取り付けてある構造」の場合は「県内初の出土例になる」とし、今後の調査研究に注目している。
久保地尾根遺跡は村中心部に近い室内地区にある。宅地造成に伴い、1994年から本格的な発掘調査を開始。縄文期の遺構や平安期の土器が見つかっている。今回の調査は3月下旬~4月中旬に実施。鉄製品は縦約3メートル、横約2メートルの竪穴の中央付近から出土した。地表から深さ約0・8メートルの地点という。
村教委生涯学習課文化財係長の佐々木潤(まさる)さん(45)は「平安期の鉄製品が今回のような形で出土するのは諏訪地域では聞いたことがない。県内で珍しい例か調べたい」と話す。村教委は今後、県立歴史館(千曲市)の協力でエックス線透過観察を行い、形状を特定して用途を調べる。
竪穴からは鉄製の刀子(カッター)や毛抜き、うわぐすりを使った「灰釉(かいゆう)陶器」が見つかった一方、(柱を立てる)「柱穴(ちゅうけつ)」やかまどが見つかっていないことなどから「個人の墓ではないか」との見方も浮上。村教委は住居跡などの可能性も探りつつ、引き続き調査を進め、本年度中に報告書をまとめる予定。