世界経済の予想と投資に役に立つ! 覚えておきたい3つの米国経済指標
個人消費の予測に便利! 「消費者信頼感指数の『期待指数』」
この指標はコンファレンス・ボードという民間調査機関が実施するアンケート調査。5000世帯が対象で、毎月25日から月末の間に公表され、国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費を予測するのに重宝されています。 ヘッドラインは「現状」と「先行き(6カ月後)」に関する消費者の景況感を合成して作成されます。筆者が重視するのは「先行き」です。 消費者が楽観的な将来見通しを持っていれば、先々の消費が拡大すると予想されるからです。実際、消費者信頼感指数の「先行き」と個人消費には一定の連動性が認められており、それが裏付けられています。最近は、株価の下落などを背景に消費者の楽観姿勢が崩れており、今度はそれが株式市場で注目され、株価下落の一因になるなど、悪循環が生じつつあります。不安の自己実現とは正にこのことです。米国の個人消費減速は世界経済減速に直結しますので、この指標に注目する必要があります。
振れが小さく、速報性に優れる「NAHB住宅市場指数」
この指標は全米ホームビルダー協会が発表するサーベイ指標です。住宅(不動産)市場の変動は経済の大きなうねりを作りだすので、常にその動向を注視する必要があります。 住宅販売や住宅着工が好調だと、一般的に家具など高額耐久消費財の売れ行きも好調になるなど、波及効果が大きいからです。ただし、住宅市場の動向を把握する指標は多岐にわたり、またそれぞれに特徴があるため、基調を把握するのは容易ではありません。 たとえば、新築住宅件数は振れが大き過ぎるという欠点がありますし、中古住宅販売件数は速報性に劣るという欠点があります。その点、このNAHB住宅市場指数は振れが小さく、速報性に優れているため、住宅市場の動向を逸早く察知できるという長所があります。 直近3カ月平均は59.7と長期平均(1990年以降、47.7)よりも高い水準にありますが、昨年10月に付けた65からは低下基調にあるので、それが住宅市場の基調変化の兆候なのか否かが注目されています。最近の米国経済はドル高・原油安の影響で企業部門が減速している一方、堅調な個人消費、住宅投資がそれを支える構図となっています。そのため、住宅市場が減速すると、米経済に対する見方が悲観論に傾き、投資家マインドが悪化しそうです。 ちなみに、リーマンショックの入り口は住宅市場の悪化でしたが、この指標を注視していればいち早く危険が察知できたわけです。2005年にこの指標が悪化基調に転じ、その3年後にリーマン・ブラザースが破綻しました。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。