肩の痛みで腕が上がらない… 「四十肩・五十肩」の原因と治療法を医師が解説
手が後ろに回らない、洋服を着替えるにも苦労するなど、さまざまな支障をもたらす肩の痛み。特に四十肩や五十肩と呼ばれる症状は長引くことが多く、辛い痛みに悩んでいる人も多いのでは? 四十肩や五十肩を治すための「モヤモヤ血管」を減らす注射の治療風景 そんな痛みをどう治療したら良いのか、オクノクリニック東京表参道の奥野先生に聞きました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
なぜ、肩の痛みが起きる? 腕が上がらないのはなぜ?
編集部: 肩の痛みに悩んでいる人は多いと思います。主な原因はなんですか? 奥野先生: いろいろな原因が考えられますが、代表的なものは四十肩や五十肩です。名称は異なりますがどちらも同じ疾患で、一般的には40代で症状が出たら四十肩、50代で症状が出たら五十肩と呼ばれています。医学的には「肩関節周囲炎」といいます。 編集部: それはどのような疾患ですか? 奥野先生: 特に骨折などの大きなきっかけがなく、急に肩の痛みが発生し、その後数週間から数ヶ月かけて緩徐に、あるいは急速に痛みが増していくという特徴があります。 場合によっては痛みのために眠れないこともありますし、重症の場合には1年半~3年程度痛みが持続することがあります。 編集部: どのような症状が出現するのですか? 奥野先生: はじめは「肩に違和感がある」という程度ですが、その後「少し動かすだけで痛い」「安静にしていても痛みが出る」といった症状が出現します。そのほか、以下のような症状が見られます。 ・手が後ろに回らない ・つり革が持てない ・夜にジンジンと痛む ・反対の脇の下に手が届かない ・服を着替えるのが一苦労 ・夜、痛みで目が覚める ・腕のほうもしびれる、痛みが走る など
四十肩や五十肩の原因は? 肩関節に炎症が起きているとはどういうこと?
編集部: 四十肩や五十肩はなぜ、発症するのですか? 奥野先生: 四十肩や五十肩の原因は、肩の炎症です。しかしなぜ、これほど強い炎症が発生するのかについてはまだ解明されていません。 ただ、転んで手をついたなど、ちょっとした小さな負担や軽微な外傷がきっかけとなり、しばらくしてから四十肩や五十肩を発症することが多いとされています。 編集部: 「肩関節に炎症が起きている」とはどういうことですか? 奥野先生: 造影剤を使ったMRIの研究によると、五十肩の患者さんのほぼ100%の方には、肩関節の前方にある腱板疎部(けんばんそぶ)という部分に炎症が起きていることがわかっています。 そして、この炎症部分には「異常な血管」が増えています。つまり、この「異常な血管」が痛みの原因であり、痛みを取り除くにはこの血管を減らすことが必要です。 編集部: なぜ、異常な血管があると痛みが生じるのですか? 奥野先生: 人間の身体には、「血管と神経が一緒に伸びる」というルールがあり、このルールは「血管と神経のワイヤリング」と呼ばれています。 つまり血管が増えているところは神経も一緒に増えており、余計に増えてしまった神経から痛みの信号が脳へ送られるため、症状が出現するのです。 編集部: なぜ、異常な血管ができるのですか? 奥野先生: 本来人間の体内では正常な血管がバランスよく配置されています。しかし、ケガなどが原因となって炎症が起きると、その炎症を治癒しようとして血液を送り込むため、余分な血管が作られてしまいます。 通常は2週間ほどで血管は減っていきますが、まれにその血管が残ってしまうことがあります。 これが「異常な血管」です。異常な血管は栄養を運ばず、それどころか正常な血液の流れから栄養を奪ってしまいます。こうして異常な血管がどんどん作られ、痛みが増幅していくのです。 編集部: 通常だと、異常な血管は減っていくのですね。 奥野先生: そうです。しかし、50代に近くなると異常な血管を減らす能力が少なくなって、増える一方になります。そのため、その年代になると痛みが出やすくなるのです。 編集部: 痛みが出る仕組みはよくわかりました。一方、四十肩や五十肩になると肩の動きが悪くなるのはなぜですか? 奥野先生: 異常な血管からは線維がもれて、周囲に溜まりやすく、普通なら柔らかくて伸びのある関節の袋が硬くなってしまいます。四十肩や五十肩になると肩の動きが悪くなるのはそのためです。