「カスハラ」法整備でもそう簡単に解決しない事情
厚生労働省が掲げるカスハラの定義は、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」。 さらに、要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いものとして、「身体的な攻撃(暴行、傷害)」「精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)」「威圧的な言動」「土下座の要求」「継続的な、執拗な言動」「拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)」「差別的な言動」「性的な言動」「従業員個人への攻撃、要求」をあげています。
しかし、現場では「どこからがカスハラで、どこまでがカスハラではないのか」という線引きが難しく、「我慢せざるをえない」というケースが少なくありません。社会問題化しつつある今、行政機関には、より具体的なガイドラインの提示が求められています。 ■「罰則規定なし」で疑われる実効性 実際、都は防止条例に加えて禁止行為などをまとめたガイドラインを作成し、市区町村などと連携して、事業者や顧客などに情報提供、助言、相談などを行っていくとみられています。現場対応者の心をケアするほか、顧客への啓蒙活動など、ハード・ソフトの両面で未然に防ぐ方法も充実化させていく方向性なのでしょう。
ただその一方で「違反者への罰則は設けない」という基本方針に対して、実効性に対する疑問の声があがっています。さらにそれは、今後見込まれる国と厚生労働省の対応でも同様。2019年に労働施策総合推進法を改正し、「パワハラ防止策を企業に義務化したときと同じような対応にとどまるのだろう」という見方をされているのです。 しかし、パワハラは違反者に対する行政からの「助言・指導または勧告」「改善が見られなかった場合の企業名公表」がそれなりの実効性を伴う理由となってきましたが、相手が個人のカスハラではどうなのか。すでにネット上には「カスハラをするような人は聞く耳を持たない」「罰則がなければ繰り返すような人だろう」などと疑問視する声があがっています。