「最近忙しいので……」と断るのはもったいない! 「リスキリングは必要?」と思う人の残念な“誤解”
だから投資家は「人的資本への投資」をどこまでやっているかで企業価値を推し量る。社会貢献にもつながる姿勢だからだ。 リスキリングをやりすぎる人が会社や上司から、「もっと業務にも力を入れてくれ」と注意されるのなら理解できる。しかし、リスキリングを受けたほうがいい当事者が業務優先を理由に「学びを後回し」にするのは、まるで時代に合っていない。 リスキリングを強制しないと自己投資をしない人が多いから、会社から義務づけられるのだ。「ありがたい」「これは会社の思いやりだ」と受け止めたほうがいいだろう。
■毎月、何時間のリスキリングが必要か? それでは、社会人はどれぐらいの勉強時間を確保すべきなのだろうか? その問いに答えるため、人材教育にまつわる有名な法則を用いて考えてみたい。その法則とは「ロミンガーの法則」である。 「ロミンガーの法則」とは「70:20:10の法則」とも呼ばれている。3つの割合がある通り、人の成長に影響をもたらすのは以下の3種類。 ・業務体験(70%) ・他者からの薫陶(20%)
・研修/読書(10%) そこで年間の労働時間を1人当たり2000時間として計算してみる(1日8時間×月21日労働×12カ月=2016時間)。そうすると「70:20:10の法則」で分解すれば、 ・業務体験 → 1400時間 ・他者からの薫陶 → 400時間 ・研修/読書 → 200時間 となる。 ここで気になるのが200時間の「研修/読書」だ。この時間こそが社会人が意識すべき勉強時間なのである(リスキリングを含む)。この時間を月平均にすると、毎月16~17時間。1日の業務時間を仮に8時間とすると、だいたい2日間を勉強に充てるべきだと考えられる。
「お金」でたとえてみよう。可処分所得が毎月20万円であれば、毎月2万円を貯蓄(もしくは積み立て投資等)に回す計算だ。決して多すぎる割合ではない。「20万円のうち、2万円ぐらいは将来のために貯金しよう」と言われて、「そんなにたくさん?」と思う人は多くないはずだ。 まとめると、すべての会社員は、アップスキリングはもちろんのこと、リスキリングも必要である。「マスト(Must)」のみならず「ナイストゥハブ(Nice to have)」の知識やスキルも手に入れていこう。お金と一緒で、本当に必要になってから貯めようとしても(身につけようとしても)遅いからだ。
いきなり毎月16~17時間の確保は難しくとも5時間、10時間ぐらいは新しい知識の習得やスキルアップに努めていこう。そうしないと人生100年時代を乗り切れない。人的資本経営の時代となり、会社の理解、後押しもあるのなら、それを利用しない手はない。
横山 信弘 :経営コラムニスト