東証による異例の「PBR1倍割れ企業に対する改善要請」…外国人投資家の評価は?【株式ストラテジストが解説】
日本株の割安さを指摘する声と「NISA拡大」への期待
2023年8月9日の日経新聞のインタビュー記事で、スイスに本拠があるクアエロキャピタルのローワン・チャップリン氏は、「日経平均が33年ぶりの高値に上昇した理由として、東証が上場企業にPBRの引き上げを働きかけた影響が大きい、日本株にはPBRが割安な銘柄が多い」として、東証の施策を評価しました。 ロンドンのウェイバートンのステファン・ラインヴァルト氏は、私もロンドンに出張するといつもお会いする投資家ですが、日本株上昇の条件として、「日本企業が資本効率に取り組む姿勢を示し続けることだ。日本の個人や機関投資家が日本株の魅力に目覚めて投資を拡大すれば、上値を期待できる」と述べました。外国人投資家は2024年からのNISA拡大で、個人投資家の日本株投資が増えると期待しています。
シンガポールのイーストスプリングは東証の改善要請を評価
シンガポールのバリューファンドのイーストスプリングは、2023年8月の情報提供資料「日本株投資:条件は整ったか?」で次のように述べています。 ・日本株の2023年6月末のPERは過去10年平均並みの約14倍だが、CAPE(景気調整PER)は依然として過去平均を下回る水準にある。 ・PBRは日本株が1.5倍と、欧州株の1.9倍や米国株の4.3倍より割安だ。日本株のバリュエーション水準は超格安というよりは魅力的な水準と評価している。 ・東証は2023年1月にPBRの低迷が続く企業に対して、バランスシートの改善計画を開示するよう勧告し、日本企業への圧力を強めた。我々は、コスト削減やリストラを発表する企業が増えることをポジティブに見ている。 ・日本は「横並び文化」が根付いているため、経営陣の多くは東証の目標に沿うようモチベーションを高め、将来的に株主重視の姿勢を強めると予想される。 ・東証からの改善要請の後押しとは別に、日本企業はアクティビストの動きの活発化からも圧力を受けている。株主からの積極的な経営関与は、経営陣の質の向上をさらに促進する。 ・日本企業の約半数はPBR1倍割れで取引されており、非金融企業においては手元資金から有利子負債を差し引いたネットキャッシュが自己資本の20%を超える企業の割合が約4割に達している。このことは、自社株買いが勢いを増すなか、投資家にとって魅力的な投資機会が豊富にあることを示唆する。 ・日本企業が株式持合を半減させ、ネットキャッシュ÷株式時価総額が欧州並みの水準になれば、ROEを現在の8~9%から11~12%に改善できる。PBRも調整され、欧州並みの水準に向上しよう。 ・日本企業はデフレ環境、資本配分や事業ポートフォリオの焦点不足、業界内の統合不足のため、営業利益率が低い傾向にあった。 ・日本がデフレから脱却するための最高のチャンスが到来している。インフレ率が40年ぶりの高水準へ上昇するなか、個人投資家は資産価値を守る必要性に気づき始めている。 ・日銀の金融政策の正常化が日本株の長期投資を損なうとは考えておらず、長期的な構造的追い風が数多くあるため、日本株は底堅いだろう。