「世の中にある仕事術なんてウソばっかり」元テレビ東京ディレクターが説く“正しい”仕事との向き合い方
■ “誰のための仕事なのか”を見失わない 「どうせバレない」「別に自分がやらなくても」などと考え仕事をおろそかにすれば、それはまわりまわって自分の首を絞めかねないというのだ。反対に日頃から真摯な態度で仕事に取り組んでいれば、周囲からの信頼を築くことができる。 そしてそれは段々と「あいつに任せれば責任感を持ってやり切るに違いない」という評価に繋がります。会社員であればその時が──いえ、その時だけがチャンスです。結局のところ、組織の中で力を発揮する機会を得て、独り立ちする脚力をつけるにはそれが何よりの近道なのです。 日々の仕事に懸命に取り組むことはもちろん大切だ。しかし時間に追われ目の前のタスクをこなすことで精一杯になるほど、人は視野が狭くなってしまうと上出氏は語る。 本来的に、その仕事はなぜこの世界に存在しているのか。その仕事は誰のためになされるものなのか。そしてその仕事を通じてどんな世界が実現されるべきなのか。それを見失うとろくなことにならない。 善きことをしようと努めれば努めるほど、ビジネスはうまくいく。それがこの世界の仕組みだということです。 コストパフォーマンスや目先の利益に焦点を合わせ過ぎていないか、短絡的な思考に陥っていないか、といった意識が、結果的に自身のキャリアを盤石なものにすることにつながる。 ■ コンテンツづくりに欠かせない人間の欲望 “誰のため”を考えながら仕事に励んでいるにもかかわらず成果が出ないときは、アプローチの方向性が間違っているのかもしれない。上出氏曰く、多くの人の目に留まるコンテンツは人間の“欲望”をうまく利用しているという。 例えば「終電を逃した一般人に声をかけ、タクシー代を出す代わりに家までついて行く」というコンセプトのテレビ番組は、企画者の「人妻が見たい」という欲望が発端となり生まれたものだった。
■ あらゆる商売の原点は「欲望」 もちろんそのままでは制作許可が下りないので、企画を練り上げる中で自身が持つ欲望をさらに分析。根本的には「他人の深夜の無防備な姿が見たい」気持ちがあることに気付き、性および衣食住の“住”という人間の興味が集まりやすいポイントを意識した番組が誕生した。 未だコンテンツ化されていない欲望が自分の中にあれば、それは大きなチャンスです。あるいはあなたの周囲に妙な欲望を持っている人がいるのであればそれもチャンス。映像コンテンツに限りません。あらゆる商売の原点はここにあります。 ほかにも、同書では競争の激しい世界に身を置き、キャリアを積んできた上出氏ならではの仕事との向き合い方について詳しく述べている。番組制作の過程をフィクション形式で紹介するパートでは、ドキュメンタリー制作現場の想像以上の厳しさも体感できる。 仕事や人生に悩む人はもちろん、プロフェッショナルの仕事ぶりを覗いてみたい人も、手に取ってみてはいかがだろうか。
東野 望