ヨーロッパ訪問後、1日だけ休んで、すぐ中東へ 岸田首相の“弾丸ツアー” 「外交の夏」真っ盛りの理由は?
■中国との経済関係重視の欧州 「デリスキング」を強調
実際、ヨーロッパの国々は中国との経済的な結びつきも重視している。EUのフォンデアライエン委員長は岸田首相との首脳会議後、中国との経済関係についてサプライチェーンの多様化や経済安全保障の重要性に言及しつつも、「決して『デカップリング(=切り離し)』ではない、『デリスキング(=リスクの低減)』だ」と何度も繰り返した。 また、NATOが東京に開設を検討していた連絡事務所については、フランスのマクロン大統領が中国に配慮して反対の意向を示したため頓挫に追い込まれた。中国に対する向き合い方は、威圧的言動に直面する東アジアの日本と、地理的に離れたヨーロッパでは温度差があるのが実情だ。 そして、中国以上に一筋縄では行かないと同時に、日本もEUも今後の関係強化が特に重要だと捉えているのが、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国だ。
■「グローバルサウス」を意識 変化する「自由で開かれたインド太平洋」構想
グローバルサウスの国々への配慮が見て取れるのが、日本が提唱した構想として有名な「自由で開かれたインド太平洋」「FOIP(=フォイップ)」の変化だ。 最近、日本政府は意識して「自由で開かれたインド太平洋」ではなく、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」という言葉を使うようになってきている。 表現を変更した点の1つ目は『法の支配に基づく』という枕詞(まくらことば)。ここでいう法は「国連憲章」などが想定されていて、民主主義体制ではないグローバルサウスの国々でも共通して守れる価値観を掲げている。 ある外務省幹部は「“意識高い系”の欧米が、上から目線で『民主主義・人権』を振りかざしてもグローバルサウスの国々はなかなか付いてこない。アメリカも最近になってようやく民主主義VS権威主義という二元論ではダメなことを理解し始めた」と解説する。 そして、2つ目が「インド太平洋」を「国際秩序」に置き換えた点。「インド太平洋」という地理的概念で限定してしまうと、グローバルサウスの国々が「じぶんごと」として捉えられなくなってしまう。そのため、あえて抽象的な「国際秩序」という言葉を使い、世界のどこでも、「力による一方的な現状変更は許されない」ということをアピールする狙いがある。