【歴史】原始の地球上に「土」が存在しなかったという驚き 土はどこから運ばれ、どうやって作られたのか?
そこで、狩猟採集から農耕への移行を「土を知るところから始めよう」というのが、生命誌の提案です。1万年前の人がそこに気づかずに農耕を始めたのは仕方のないことですが、今なら「土」から始められるはずです。 ここでまず土とは何かを確認します。土は、1人の人間としては子どもの頃から、人類としては古代から接してきたものなので、土ってなあにと考えることはほとんどありません。 しかし、今や土を知ることが大事なので基本をまとめましょう。
■原始の地球には「土」はなかった? 原始の地球は岩石(地殻)と水(海)とでできており、土壌はありませんでした。意外に気づいていない人の多い事実です。 地表地殻の岩石は少しずつ破砕されていきます。これを「風化」といい、地表の温度変化に伴う膨張・収縮や、雨・氷雪に長期間さらされて起きる「物理的風化」と、化学反応によって岩石の成分が水に溶けたり分解したりして起きる「化学的風化」があります。いずれにしても地表に小さな石ができ、さらには砂になっていきます。
これだけでは土にはなりません。 地球に、あるとき生きものが生まれます。40億年ほど前の海には、現存の生きものの祖先となる細胞が存在したことは確かですので、ここを出発点にします。 海中での進化によって多様な生きものが誕生し、5億年ほど前になってやっと上陸が始まります。なぜ地球に生きものが存在するのかと考えると、そこに水があったからという答えになるでしょう。 日常私たちは、水は必要なものと思って過ごしていますが、水の意味はそれ以上であり、水があってこそ生きものがいるという関係なのです。
ですから、生命誕生から35億年近くの時間、生きものたちが海で暮らしていたのは当然です。 しかし、どうも生きものには冒険心があるらしく(浅瀬が混雑し始めて追いやられたという考えもあります)、上陸大作戦が始まります。まず植物、次いで昆虫たち、さらに動物が上陸し、それとともに土がつくられていくのです。 植物の枝や葉が落ち、それをミミズやシロアリなどの動物がさまざまな微生物とともに分解して、土ができていくという作業は今も続いており、その土が植物の生育を支え、多様で複雑な陸上生態系ができ上がっているのです。