「マスターズ」出場を19歳アマ選手が“辞退”の衝撃 背景には世界ゴルフ界の競争激化も
ディンが出場辞退した理由に新制度
優勝特典として授けられるメジャー大会出場権は、アマチュアのステイタスを維持していなければ享受できないことが、あらかじめ規定されている。すぐにプロ転向してしまったら、来年のマスターズと全英オープンの出場権は放棄することになる。 しかし、ディンは「たぶん僕はプロ転向する。そしてDPワールドツアーのツアーカード(出場権)を選ぶ」。 そんなディンの言葉を耳にして、アジア・パシフィック・アマチュアを主催するR&Aやオーガスタ・ナショナルの関係者は複雑な表情を見せていた。 「せっかく授けられたマスターズと全英オープンの出場権を自ら辞退するなんて……」と、誰もが思うことは想像に難くない。 しかし、よくよく聞いてみれば、ディンがそうすることを選んだ背景には、R&A等の協力を得てDPワールドツアーが今年6月に創設した新たな制度の存在があり、だからこそ、R&Aをはじめとするアジア・パシフィック・アマチュアの大会関係者は複雑な表情を見せたのだ。
大学を離れてまで新制度を利用
今年6月、DPワールドツアーはR&AやPGAツアー、WAGR(世界アマチュア・ゴルフ・ランキング)の協力を得て、「グローバル・アマチュア・パスウェイ」なる新たな制度を創設した。 世界トップレベルの男子アマチュア選手にプロキャリアの第一歩をスムーズに踏み出してもらうための新たな道として、全米カレッジゴルファー(NCAAディビジョンI)を除くWAGRトップ20に翌年のDPワールドツアー出場資格が付与されることになった。 これは、PGAツアーが全米のカレッジゴルファーを対象に創設した「PGAツアー・ユニバーシティ」という制度を、米国以外の世界のアマチュア向けに拡大した“グローバル・バージョン”と言っていい。 米ゴルフウィークによると、この制度の立ち上げが発表された今年6月、ディンは米国のアリゾナ州立大学に在籍していた。制度を利用してDPワールドツアーからプロキャリアを歩み始めようと意を決したが、全米カレッジゴルファーのままでは制度の対象になれないため、この秋、大学を離れたそうだ。 米国のカレッジゴルフ経由で歩み始めていたプロへの道を、DPワールドツアー経由でプロデビューする道へと素早く方向転換したのである。 すでにPGAツアーやDPワールドツアーの数試合に挑み、さまざまなアマチュア大会でも次々に好成績を上げていたディンは、自身が目指した通り、グローバル・アマチュア・パスウエイ・ランキングで堂々1位に躍り出た。「その年の終わりまでに20歳以上であること」という条件が付けられているが、ディンはこの11月で20歳だ。すべての条件をクリアできている。