高1娘とショッピングに行ったら、映画『リアリティ・バイツ』を久しぶりに見たくなった件
大人になってしまった私は、もう暴力的なほどの衝動を持ち合わせていないけど、リレイナの強い怒りは理解できる
私は高校時代、映画研究部に所属していて、学校でもずっとハンディカムのビデオカメラを持ち歩いて、なんでもない友人の普段の姿を撮影していました。今となっては、あれは『リアリティ・バイツ』の影響だったんだろうなあと、ちょっぴり恥ずかしく思い出します。撮り溜めたその映像を何度も見返し、地元のテレビ局に持ち込んで編集までさせてもらったことも。なんたる行動力! それが今やスマホで気軽に撮影できるはずなのに、その場で編集だってできるのに、それはしないのです。 若い時ってやっぱり溢れるものがあり、それをぶつける捌け口に似たものが、情熱であり、それが原動力だったのかもしれません。大人になってしまい疲れ切った私は、もう暴力的なほどの衝動を持ち合わせていないのです。 しかしそんな今でも物語の終盤、自分の作品をMTVのスタッフに、納得いかない形に編集されてしまったリレイナの強い怒りを理解することができます。他人にとっては意味をなさないものでも、自分にとっては大切な宝物。たとえ自身の作品が大衆にウケなくても、一方的に評価を下され勝手に改竄されてしまうことには怒るべきなのです。
ウィノナ・ライダーのファッションは今見ても新鮮で、大人にぴったりの着こなし
マイケル役のベン・スティラーはこの作品が初監督作品。早々に主演女優としてキャスティングが決まっていたウィノナ・ライダーは、この映画の影の立役者だったそうです。当時実際にMTVで活躍していたベンがメガホンを取るということで、ウィノナはイーサンに電話をかけて「あなたも出演するべき!」と説得したのだとか。そしてウィノナは若い女性が書いた物語を映画にしようと先頭に立ち、まだ新人であったヘレン・チャイルドレスは自身初の脚本をこの映画で書くことができました。ヘレンは映画公開当時25歳!『リアリティ・バイツ』は、若者による若者のための映画だったのです。 くるくると変化する魅力的な表情に、無造作なショートヘア。瞳を縁取っているびっしりとしたまつ毛、オレンジがかったリップ。この映画のウィノナは、どの瞬間も魅力的で永遠に見つめていたいほど可憐です。ファッションだってシンプルなのにキュート。品が良いのに、ちょっとくずしていたり、レトロだったり。今見てもいっさい古臭さを感じません。90年代スタイルが最先端に見える今、この映画はファッションムービーとしても楽しむことができます。 チビTは難しくても、この映画のウィノナのファッションなら今の私でも真似できそう。赤のノースリにデニム。白のレースニットのワンピースにブラウンのポシェット。小花柄のワンピース。そして黒のローファー。大人にぴったりの着こなしです。 そして三角関係の甘酸っぱい恋愛ストーリーも存分に味わってほしいところ。ポップに見えて、人々の心の移ろいや葛藤が丁寧に描かれた映画であることに気づきます。 どこに行っても暑い夏に、くつろぎながら家でのデートムービーとしてパートナーと観るのもありですよ。そのときはぜひ、手作りのピザを片手に楽しんでくださいね。なぜ、ピザか? それは映画を見てからのお楽しみ。決してハッピーなエピソードではないのですが! Staff Credit 撮影/今井裕治 ──── 今井 真実 Mami Imai 料理家 レシピやエッセイ、SNSでの発信が支持を集め、多岐の媒体にわたりレシピ製作、執筆を行う。身近な食材を使い、新たな組み合わせで作る個性的な料理は「知っているのに知らない味」「何度も作りたくなる」「料理が楽しくなる」と定評を得ている。2023年より「オージービーフマイト」日本代表に選出され、オージービーフのPR大使としても活動している。既刊に、「低温オーブンの肉料理」(グラフィック社)など。