高1娘とショッピングに行ったら、映画『リアリティ・バイツ』を久しぶりに見たくなった件
先行き不透明な1990年代の空気を詰め込んだ、甘くてしょっぱくってしびれちゃう青春恋愛映画
『リアリティ・バイツ』は1994年に公開された、若者たちの青春と恋愛を描いた映画です。ウィノナ・ライダー演じるリレイナは、大学卒業後TV局に就職してドキュメンタリー制作を夢見ていました。しかし仕事はなかなかうまくいかず、結局無職に。同じくブラブラしている男友達のイーサン・ホーク演じるトロイ、サミー、そしてGAPで働き続けて店長にまで出世した親友の女友達ビッキー、男女4人で共同生活を送ることに。彼女は友人たちの日々やインタビューをビデオカメラで撮影し、いつかそれをまとめた作品を作りたいと思っていました。 そんなリレイナが出会ったのが、ベン・スティラー演じるマイケル。彼はなんとMTVの編集局長。マイケルとリレイナは仲を深めていきます。しかし、そんなリレイナの様子にトロイはやきもきして、まるで子どものように彼女に喧嘩をふっかけます。 そしてある日事件が起こります。 リレイナは自分の撮り溜めていた映像をマイケルに見せたところ絶賛されて、彼に素材ビデオを預けます。すると彼女の意図とは違う方向性のドキュメンタリーが作られてしまったのです。彼のスタッフによって、若者の葛藤がおもしろおかしく編集されて、それはそれはひどい作品に……。理解者だと思っていた恋人が自分の誇るべき作品をめちゃくちゃにしたなんて…とリレイナは自尊心がぼろぼろになってしまいます。 「ジェネレーションX」と呼ばれる若者世代の、不況時代真っ只中の将来への不安、ひりひりするような恋、そしてこの頃にはまだ不治の病であったエイズへの恐怖心――そんな不安定な90年代の空気をぎゅぎゅっと詰め込んだ『リアリティ・バイツ』。”Reality Bites”とは「現実は厳しい」との意味だそう。
もやもや青春期どまん中の私の、行き場のない悩みを吹き飛ばしてくれたバイブルでした
当時、もやもや思春期ど真ん中の私にとって、この映画はまさにバイブル。将来のことなんて考えられないし、自分が何をしたいのかなんて分からない。そもそも「私」って何? そんなふうにアイデンティティを真剣に悩むお年頃ってありますよね。そしてその行き場のない悩みを吹き飛ばしたのが何を隠そう『リアリティ・バイツ』でした。不思議なことに、「なーんだみんな同じようなことで悩んでるのか、じゃあ仕方がないか」とあきらめがつき、もやもやが晴れたのです。 サウンドトラックのアルバムも話題になり、収録されていたリサ・ローブの「STAY」、ビッグマウンテンによる、ピーター・フランプトンのカバー曲「ベイビー、アイ・ラヴ・ユア・ウェイ」も大ヒットしました。U2やレニー・クラヴィッツ、ダイナソーJRなどビッグネームも参加していましたし、なんせこのサントラではイーサン・ホークのしゃがれ声の劇中歌まで聞くことができます。このイーサン・ホークの曲は色気たっぷり。ブルージーでとってもかっこいいんです! そして、イーサン・ホーク演じるトロイの魅力的なことよ!! ハンサムで頭もいいのに、世の中を斜めに見ているトロイ。リレイナがカメラをまわしているときも、トロイはおもしろおかしく世の中の矛盾や資本主義を皮肉るのです。その上ナイーブで女たらし。字面だけ見るとそんな男性と恋に堕ちたら、困ってしまうことは目に見えているのに、もうトロイだったら良い! 仕方がない!!と思わせる神々しさ! 繊細さ!