「大浦の担ぎ屋台巡行」の伝統担う「水交団」 屋台揺らす「モミ」「サシ」で魅了 鴨川(千葉県)
鴨川市にある大浦八雲神社の市指定無形文化財「大浦の担ぎ屋台巡行」。1トンはあるといわれるこの屋台を担ぐのが、「水交団」と呼ばれる地元の男衆だ。彼らが魅(み)せる激しい「モミ」「サシ」、祭礼中は鳴りやむことのないお囃子(はやし)は、鴨川地区合同祭礼の大きな目玉だ。今年も男衆らの迫力ある姿が、多くの人を魅了した。 「そりゃー、そりゃっ、そりゃっ、そりゃっ、そりゃっ」。50~60人の男衆が、太鼓を打ち鳴らす演奏者ごと屋台を担ぎ上げ、威勢のいい掛け声とともに港町を練り歩く。 大浦地区は鴨川漁港周辺を指し、目の前の海は豊かな漁場で、江戸時代中頃から漁業が盛んな地域。水交団はかつて、海難救助などにあたる地元漁師の集まりだったといわれる。今も伝統行事の担い手として存在感を示す。 担ぎ屋台は、3本の担ぎ棒に屋根形の屋台をのせた構造をしている。屋台には3人が乗り込み、太鼓を鳴らして豊漁と無病息災、家族の安泰を祈願する。屋台は小舟を、担ぎ手が揺らす様は波がうねる海を表現しているとされる。
担ぎ手たちは、太鼓奏者を乗せた屋台を勇壮に担ぎ、たたき手はいかなる場合でも演奏を止めることなく、一心不乱に太鼓をたたく。男衆の中には緞子(どんす)と呼ばれる化粧まわしを着けて屋台を担ぐ者もいる。かつては漁師の若者が自分の稼ぎで作る「晴れ着」として着けたといわれる。その風習の名残で、この緞子も祭礼を彩る特色の一つだ。 猛者たちが力いっぱいに屋台を担ぐ姿は圧巻で、7日に行われた鴨川地区合同祭礼では、その荒々しい姿を見ようと多くの人々が見物に駆け付けた。 担ぎ手たちは、屋台を激しく揺らしたり、掲げたりする「モミ」や「サシ」を大勢の見物客の前で披露。途中、重さに耐えきれず屋台を落とすこともあったが、屋台の太鼓奏者らは演奏を止めることなくたたき続け、見物客らもその迫力に圧倒されていた。 今年の祭りを無事に終えた水交団団長の山本浩昇さん(55)は「担ぎ屋台が出ることで地域、祭りが盛り上がってくれればうれしい。この先も伝統を絶やすことなく続けていきたい」と担ぎ屋台に込める思いを語った。 (押本裕也)