商業施設と物流施設に特化したJ-REITの特徴と展望
物流施設特化型J-REITとは?
物流施設特化型J-REIT(以下、物流リート)は、倉庫や配送センターなどの物流施設に投資をします。 物流施設の賃貸契約は長期固定の賃料形態がほとんどです。そのため、物流リートの賃料収入は景気動向に左右されずに、非常に安定しています。とはいえ、長期的に見れば、やはり、物流に対するニーズの変化や施設の競争力が大きく影響してくることになります。 物流リートは、近年とくに注目を集めているタイプのJ-REITのひとつといえます。その大きな原動力となっているのが、大型で最新の設備を導入した先進的なマルチ(複数)テナント型物流施設へのニーズの拡大です。 日本国内の物流の中心はトラック輸送ですが、実はトラック輸送量は近年傾向的に減少しています。一方で、電子商取引(EC)や通信販売の拡大により、取扱件数は増えているのです。つまり、物流の小ロット化が進んでいるわけですね。しかも、即日配送など、商品配送のスピード競争も繰り広げられています。そうしたニーズを満たす先進的物流施設はまだまだ不足していて、ニーズが傾向的に増大しているわけです。 物流リートで時価総額最大の日本プロロジスリート投資法人は、米国の物流リートのプロロジスを中心とし、グローバルな物流施設運営で最大規模を誇るプロロジスグループをスポンサーとしています。 時価総額第二位のGLP投資法人も外資系で、シンガポールに本拠を置く物流世界大手のグローバル・ロジスティック・プロパティーズを中心とするGLPグループがスポンサーとなっています。 国内系では、J-REITにおける物流リート第1号の日本ロジスティクスファンド投資法人があり、こちらはメインスポンサーが三井物産、サブスポンサーが三井住友信託銀行、ケネディクスとなっています。また、ラサールロジポート投資法人は、今年2月に上場したばかりの新しい銘柄で、米国の不動産投資顧問大手ラサール・グループがスポンサーになっています。 ちなみに、J-REITの分配金では、利益の配当以外に、利益以外からも建物減価償却費の一部を分配することが出来ます。この利益超過分配金と呼ばれる規定を採用するJ-REITは多くないのですが、物流リートではよく見られます。 減価償却費は会計上の費用なので、それに相当する資金は会社内部にとどまったままになっています。この建物償却費分の資金は、本来は建物の修繕費用などに充てることが望ましいとされていますが、物流施設ではそれほど大きな修繕費用が発生しないので、それを分配金に回すわけですね。 ただし、その分、分配金利回りが実際の利益力よりも高く出ることに注意が必要です。また、この利益超過分配金は利益の配当ではなく、資本の払い戻しという扱いになります。特定口座で取引をしている分には特に意識する必要はありませんが、一般口座の場合は、確定申告の際に投資口の取得価格をその分修正して申告する必要が生じます。 (ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役・田渕直也) 著書に『入門 JーREITと不動産金融ビジネスのしくみ』、『入門 金融のしくみ』『世界一やさしい金融工学の本です』(すべて日本実業出版社)。