東日本大震災の被災3県、「遺体安置所」6割が未定…「災害によって適した場所変わる」など理由
東日本大震災で多数の死者が出た岩手、宮城、福島県の約6割の自治体が現在も災害時の遺体安置所を選定していないことが、読売新聞の調査でわかった。1月の能登半島地震でも250人以上が亡くなった石川県の奥能登4市町で選定されておらず、急きょ葬儀場が受け入れるなど混乱した。識者は「死者の尊厳を守る意味でも、平時から備えるべきだ」と指摘している。
読売新聞は2~3月、岩手、宮城、福島3県の全127市町村を対象に災害時の遺体安置所に関するアンケートを実施し、全市町村から回答を得た。設置場所を「事前に定めている」は44市町村、「定めていない」は80市町村。震災の津波で多数が死亡した沿岸部(37市町村)の21市町も未選定だった。
未選定の理由は、「施設管理者や周辺住民の理解を得るのが難しい」(宮城県気仙沼市)、「津波や土砂など災害によって適した場所が変わるため選定しがたい」(岩手県久慈市)などだった。
「定めている」とした44市町村でも、12市町村は「適当な場所に設置」などとして具体的な場所を決めていなかった。遺体の引き渡しに必要な検視を行う場所を「定めている」のは、23市町村にとどまった。
国の防災基本計画では、遺体搬送の手配やひつぎの調達は市町村の役割とされており、遺体安置所は市町村が原則、開設しなければならない。
能登半島地震の被災地、石川県輪島市と珠洲市も未選定だった。
関連死を含め112人が死亡した輪島市では、廃校だった中学校の体育館を活用した。しかし、割れた窓ガラスが散乱するような場所にひつぎが並べられたため、遺族から「安心していつでも顔を見られるような環境がほしい」との要望が出され、地元の葬儀場に引き受けてもらった。
将来、日本海溝・千島海溝地震や、南海トラフ地震などの大地震が想定されている。静岡県や宮崎県、愛知県田原市は安置所開設訓練を実施しているが、取り組みは一部にとどまる。