超変革に逆行? 遅すぎた阪神のFA補強戦略に賛否の声
ただ1年を戦った感触として「高山に続く第2の生え抜きが、まだ来季は戦力にならない」と、現場とフロントが判断したのならば、それはそれで、ひとつの考え方として支持はできる。 今季は「打てずに負けた」ゲームが目立った。チーム打率、打点、得点、いずれもリーグワーストで、結果は最下位転落の危機さえあるBクラス。中継ぎ、抑えのブルペン強化と共に、打線の強化が大きなテーマである。打線強化には新外国人を獲得予定だが、そこはあくまでも未知数。来季は、優勝争いすることが金本監督に課せられた命題となると、FA補強に走るのは必然の手で、ファンの期待に結果で答えるためのフロントの努力とも評価できる。今季の「超変革」があってこそ、来季勝負をかけるための戦略変更が生まれた、と前向きに捉えることもできるだろう。 また外野のFA補強を見据え、福留の一塁コンバート、中谷の三塁コンバートなどが検討されているという話もある。FA補強で今季の超変革が台無しにならないように考慮した大シャッフル案である。 もし糸井が取れるならば53盗塁の機動力を使えるのは大きな魅力で阪神に足りないピースであることは事実。専属トレーナーと契約してトレーニングを継続していて、フィジカル面でも衰えはない。しかもここにきて、脅威のペースで本塁打を量産している。だが、左打者絶対不利の甲子園に本拠地が変われば、戸惑うことは必至だろう。今季の交流戦の成績も、打率.231、1本、7打点と低迷している。投手のレベルはセ・リーグが落ちるが、ゾーンを上手く使うセ・リーグの配球にも手を焼くのかもしれない。 最終的にはマネーゲームとなるのが昨今のFA市場だが、早い段階で“固められた選手”には、他球団が手を出しにくいという傾向もある。巨人、ソフトバンク、楽天の水面下の動きは6月から聞こえてきた。阪神は“上”からGOサインが出ていなかったため、現場レベルではできる限りの調査は進めても、そこから先に踏み込むことができず、ここまでまったくの手つかずだった。出遅れたことが原因でFA補強に失敗することがチームのためになるのか、それともFA補強の成功が来季の優勝争いにつながるのか。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)