超変革に逆行? 遅すぎた阪神のFA補強戦略に賛否の声
4年ぶりのBクラス転落が決定した阪神が遅ればせながらFA戦線への参戦を決めた。すでに複数のスポーツメディアが報じているが、筆者の取材でも、オリックスの糸井嘉男(35)をメインターゲットに、同時に日ハムの陽岱鋼(29)、中日の平田良介(28)、横浜DeNAの山口俊(29)、楽天の嶋基宏(31)らの調査を一斉にスタートした。 巨人、ソフトバンク、楽天らは、6月には水面下で動き出していたから、阪神のアクションはずいぶんと遅い。その理由はフロントの準備不足と、金本監督が当初、若手を育てるという超変革路線を来季も継続する考えでいたからだ。だが、ここに来ての大きな方向変換。阪神ファンの間では「今年の超変革は何だったのか」「巨人と同じことをするな」「補強は正しい手法」という賛否が巻き起こっている。 投手に関しては、長いシーズンを戦い優勝を手にするためには資金力があるのならば何人を補強しても困ることはない。ファンの批判を受けることもない。だが、野手のFA補強に関して言えば、8人という限られたポジションのひとつを明け渡すわけだから少し事情が違う。 今季、ルーキーの高山俊(23)が、リーグナンバーワンの得点圏打率を残すなど、レギュラーの一角を奪い取り、6年目の中谷将大(23)も、60試合、打率.265、4本、14打点の数字ながら1軍にしがみついている。1、2軍をエレベーターしたが、来季以降を見据えてチャンスを与え続けた江越大賀(23)、4月には高山とのコンビで旋風を巻き起こした横田慎太郎(21)も次世代の外野手として控えている。 金本監督がせっかく種を蒔いたその外野に、糸井や平田を獲得して、福留孝介(39)、高山に続く、外野の残り1枠を埋めてしまう補強をしてしまえば、この1年の「超変革」に逆行することになるのではないか、という議論が起きるのは当然だろう。 和田前監督ができなかった大胆な若手抜擢があったからこその「超変革」。それを評価してBクラスに落ちたことを黙認してきたファンの我慢は何だったのか、ということになる。本来、手厳しい関西のメディアも含め、来季への期待値をこめて、大目に見てもらっていたのである。だが、その我慢の1年を無にするようなFA補強に乗り出すとなると話は変わってくる。 元ヤクルト、西武で監督を務めた広岡達朗さんも、スポーツライターの駒沢悟さんの取材に対して「広島の優勝が示した意義を阪神や巨人は考えるべきだ。フロントがぶれないビジョンを持ち、自前の選手を辛抱強く育てる。そして、それを教えることのできるコーチを育てる。出来上がってきた選手をFAで取ってきて勝つことを続けていては、チームに伝統は生まれないし、常勝軍団を作ることはできない」と答え、阪神のFA戦略に対しては否定的だった。