「若い頃はウソばっかついてた」 仕事の相談をしなかった佐久間宣行が、“おじさん”になって相談を受けまくるようになったワケ
本当のことを言うから、相談されるようになった
──若い時期って、佐久間さんは人に相談するタイプだったんですか? 全然しなかったです。若い頃は上を全く信用してなかったし、本心知られたくなくてウソばっかついてた(笑)。 ──でも、そんな佐久間さんが悩みを相談される側にはなったわけですよね。それってなにかきっかけがあったんですか。 きっと、会社にとっては耳が痛いような本当のことを、僕が平気で言っちゃうタイプだったからだと思う。 テレビ局にいた頃は「これからのことを考えたら、どう考えても地上波のゴールデン向けのディレクターだけじゃ一生は食えないよ」って言ってた。「配信でも食えるディレクターになったほうがいい」って。それで会社に嫌われた(笑)。 ──正論を言いすぎた。 でも、そういう予言がたくさん当たってて、それで後輩にいまだに悩み相談される。
上手な「相談の受け方」とは
──どれぐらいの頻度で相談を受けてるんですか? すごい量だと思いますよ。今でも週に1~2回は相談受けますからね。 ──乗りやすい相談と乗りにくい相談の違いってありますか。 相談って、相談したい状況の認識が明確で自分の仮説がある人だといいんですよ。相談される方としてもいい質問ができるし、有用な答えを返すことができるじゃないですか。 相談してもちゃんと答えが返ってこないって嘆く人がいるんですけど、それって家づくりするときに、図面なしに「どういう家を建てたらいいですかね」って言ってるようなものなので、答えが返ってこないのは当然なんですよ。 ──雲を掴むような……。 そう。実は、会社の相談とかキャリアの相談って、そういう「ふわっと」したものが多いんですよね。いや、図面もってこいよ、みたいな(笑)。 ──じゃあ、話を聞きながら佐久間さんが図面を作ってあげることも? そう。どんどん聞いていくと最初は「会社の方針が~」とか言っていたけど、ただ1個上の先輩が嫌いなことに引っかかっていることが分かったり。 ──自分の置かれている状況の解像度を上げていく、っていうことが必要になってくるわけですね。 自分で自分の仮説を作る能力は作っておかないと、仕事にも影響しますよね。新しいことをやるときに自分なりの見立てができないと、常に誰かのマネをするしか仕事がうまくいかなくなっちゃうから。 ──本書でも触れられていますが、仮説を作るときのコツってなにかありますか? 僕の場合は、例えばあるジャンルで仕事をするってなったとき、ちゃんとそのジャンルのユーザーになることかな。短くても3~4ヶ月、長ければ半年ぐらいどっぷり浸かって、自分なりのユーザー体験を作る。 それと、そのジャンルについて発信している人で、自分が賛同できる意見を言う人と、まったく賛成できない意見を言う人の両方をフォローする。それでその人たちを企画のベンチマークにする。 ──両極の意見を見て、多角的な視点を養うというのは、この本の構成にも通じていることですよね。この本で、「おじさん」はどのように部下から相談を受ければいいのかという問いに対して、「いじられキャラになること」と回答されているのが印象的でした。 いじられキャラになるのは簡単で、最初に自分の失敗をしゃべることなんです。僕もラジオでは、エピソードトークで妻とか娘に怒られた話をしてますし。 ──なるほど。ただ同時に、いじられすぎると馬鹿にされますよね? その距離感が難しいような……。 おじさんになればなるほど、そもそも部下と距離があるからね。ただ馬鹿にされるかどうかは、仕事で決めればいいだけだから。 あともう1個、いじられキャラになる秘訣は、「本当にセンスのいい後輩を見つけること」なんですよ。 鶴瓶師匠がオセロの松嶋さんを見つけたように、有吉さんがみちょぱとしょっちゅう一緒にいるみたいに。ダサいやつにいじられているとつまらない。好きな芸人がダサいギャルにいじられてたらイヤじゃないですか。 ──確かに(笑)。 取材・文/谷頭和希 撮影/杉山慶伍