上皇さま91歳に 被災地に思い寄せ、「四つの日」には黙禱捧げる
上皇さまは23日、91歳の誕生日を迎えた。国内外の動向に目を留めつつ、右足の骨折から回復途上にある上皇后美智子さまを気遣いながら穏やかで規則正しい日々を送っているという。 【写真】上皇さまの91歳の誕生日にあたり、宮内庁が写真を公表した。住まいの仙洞御所で上皇后美智子さまと過ごす上皇さまの様子で、ご夫妻の後ろには日本画家、奥村土牛氏が描いた白樺(しらかば)の絵が飾られている=2024年12月11日午後、東京・元赤坂の仙洞御所、宮内庁提供 誕生日にあたり、宮内庁が近況を公表した。上皇さまは朝夕には新聞を読み、報道や書籍、侍従との会話を通じ、社会の動きに目を向けている。誤嚥(ごえん)を防ぐよう会話を控える目的もあり、食事時にはテレビニュースを見ている。特に今年は、元日の地震と9月の豪雨に見舞われた能登半島の状況と被災者の生活を案じているという。 5月には、戦時中の疎開先をたどる旅として栃木県日光市を訪問。終戦前年の夏から1年余りを過ごした旧日光田母沢御用邸では、当時の生活を上皇后さまに話し、庭の防空壕(ごう)跡を見るなどした。 上皇さまの日常は今も戦争の記憶と深くつながっている。かつて「どうしても記憶しなければならない四つの日」と述べた沖縄県の慰霊の日、広島・長崎原爆の日、終戦の日には、現在も黙禱(もくとう)を捧げ、終戦の日の前後には戦争に関するドキュメンタリー番組を視聴しているという。 とりわけ、国内で最大規模の地上戦が行われた沖縄への思いについては、これまでも会見で「これまでの戦争で沖縄の人々の被った災難というものは、日本人全体で分かち合うということが大切ではないかと思っています」と語るなど度々言及してきた。現在日課としている上皇后さまとの本の音読では、沖縄戦への従軍も経験した地元紙「琉球新報」元社長、故・池宮城秀意(いけみやぐすくしゅうい)氏の「戦争と沖縄」を読んでいるという。 ライフワークでもあるハゼ科魚類の分類に関する研究は続けており、週に2日は皇居内の生物学研究所に通う。現在は過去の論文をもとにしたチチブ類の分類や生態の再検証や、日本産クモハゼ類の分類学的な再検討など主に二つのテーマに取り組んでいる。 体調に大きな変化はないという。一昨年7月に診断された三尖弁(さんせんべん)閉鎖不全による右心不全は、現在も心不全の診断指標であるBNP値がやや高く、少量の胸水貯留も認められるが、薬の服用や水分の摂取制限などにより、比較的安定した状態が続いている。10月に右足を骨折した上皇后さまが杖を使わずに歩けるまでに回復しており、日々散策を共にしている。 23日の誕生日当日は、天皇、皇后両陛下と愛子さま、秋篠宮ご一家をはじめとする皇族方や三権の長らから祝賀を受ける予定だ。(中田絢子、北野隆一)
朝日新聞社