辞任の甘利氏「正直言えばTPP署名式には出たかった」
「本日、閣僚の職を辞することを決断した」。 週刊誌に報じられた金銭授受疑惑を受けて開かれた28日の記者会見で、甘利明経済再生担当相は閣僚辞任を表明した。記者のどよめきと無数のフラッシュの中、甘利氏はしばらくうつむいたまま唇を震わせた。
自身の建設会社側から金銭授受については、2度にわたり計100万円を受け取ったことを認め、政治資金として「適切に処理した」と説明した。一方で、神奈川県大和市にある地元事務所の秘書が500万円を受け取り、そのうち300万円を使い込んだことが、弁護士による第三者調査で判明した。 30分ほど続いた自身と秘書らの疑惑に関する調査報告が終わると、ふっと息をついた。デフレ脱却、経済再生と財政健全化、成長戦略の実現やTPPの推進などを挙げ、「アベノミクスの司令塔としてこの3年間国務に命がけで取り組んできた」と自負を見せた。 今回の疑惑報道で影響が出始めてきた国会審議には、「本来、安倍政権を支える中心的立場の人間が、逆に安倍政権の足を引っ張るということは誠に耐え難い事態」と述べた。 「たとえ私自身はまったく関与せず、国民に恥じることはしていなくても、私の事務所が招いた国民の政治不信を秘書のせいだと責任転嫁することはできない。それは、政治家としての美学、生き様に反する」。そう語ったころには甘利氏の声は震えていた。 辞任表明の後は、時折涙を見せながら、質疑に応じた。金銭授受について記者からは厳しい追及もあったが、自らが旗振り役となって交渉をまとめ、合意にこじつけた環太平洋経済連携協定(TPP)について問われると、「正直言えば(2月4日の)署名式には出たかった」と無念さをにじませた。 (撮影:山本宏樹/DELTA PHOTO)