フェラーリとマセラティを凌駕? アストン マーティンDB12 ローマ グラントゥーリズモ 3台比較試乗(2)
2024年のグランドツーリング・クーペ代表
そんなイタリア勢に対し、DB12のアドバンテージは明白。アストン マーティンの基準としては引き締まったサスペンションが組まれ、低速域では僅かに落ち着かないものの、操縦性は秀抜。ステアリングの重みづけ、正確さ、反応、すべてが完璧だ。 速度が増すにつれ、新しいダンパーが支えるサスペンションが、路面の凹凸を見事に均し始める。乾燥重量で1685kgある車重を、持て余すこともない。 小さいとはいえないボディサイズを、実感する場面もある。とはいえ、濡れたワインディングを想像以上に流暢にこなす。快晴の春の比較試乗なら、ローマの軽さや鋭さ、繊細さ、速さに打ちのめされていたかもしれない。しかし、今日は当てはまらない。 DB12が積む、4.0L V8ツインターボ・エンジンの印象も素晴らしい。アップデートされた駆動系と相まって、動力性能はクラス最速に並ぶ。落ち着いた操縦性が融合し、天候を問わず長距離旅行に出かけたいと思わせる。 インテリアの丁寧な作り込みも、イタリアの2台を凌駕する。デジタル技術で、現代水準に届いていないわけでもない。 辛口に表現すれば、DB11のフェイスリフト版かもしれない。車載技術が、大進歩を遂げたわけでもない。しかし、新しい経営体制の恩恵を受け、秀作といえる仕上がりを得たことは疑いようがない。 従来の弱点は、見事に克服された。動的な強みは、クラスをリードする次元へ磨き込まれた。スーパーツアラーという表現は別として、2024年におけるグランドツーリング・クーペの代表だと、胸を張って主張できる。
グランドツーリング・クーペ 3台のスペック
■アストン マーティンDB12(英国仕様) 英国価格:18万5055ポンド(約3442万円) 全長:4725mm 全幅:1980mm 全高:1295mm 最高速度:325km/h 0-100km/h加速:3.6秒 燃費:8.2km/L CO2排出量:276g/km 乾燥重量:1685kg パワートレイン:V型8気筒3982ccツイン・ターボチャージャー 使用燃料:ガソリン 最高出力:680ps/6000rpm 最大トルク:81.4kg-m/2750-6000rpm ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動) ■フェラーリ・ローマ(英国仕様) 英国価格:18万2675ポンド(約3398万円) 全長:4656mm 全幅:1974mm 全高:1301mm 最高速度:320km/h 0-97km/h加速:3.4秒 燃費:8.9km/L CO2排出量:255g/km 乾燥重量:1570kg パワートレイン:V型8気筒3855ccツイン・ターボチャージャー 使用燃料:ガソリン 最高出力:620ps/5750-7500rpm 最大トルク:77.4kg-m/3000-5750rpm ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動) ■マセラティ・グラントゥーリズモ・トロフェオ(欧州仕様) 英国価格:16万1250ポンド(約2999万円) 全長:4959mm 全幅:1957mm 全高:1353mm 最高速度:320km/h 0-100km/h加速:3.5秒 燃費:9.8km/L CO2排出量:230g/km 車両重量:1795kg パワートレイン:V型6気筒2992cc ツイン・ターボチャージャー 使用燃料:ガソリン 最高出力:550ps/6500rpm 最大トルク:66.1kg-m/3000rpm ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
マット・ソーンダース(執筆) ジャック・ハリソン(撮影) 中嶋健治(翻訳)