イスラエルの自衛権行使は無理筋!石破茂氏の警告「第三次世界大戦は核戦争になりかねない」
自民党議員のパーティ券による1億円にものぼる裏金づくり疑惑で永田町が揺れる中、派閥に属さない“一匹狼”石破茂衆議院議員(66)に対する期待が高まっている。この程発表された世論調査で「総理になってほしい人」ランキング1位に輝いたことを伝えるや、「そんなの、前からだよ(笑)」と石破氏は笑い飛ばした。 【画像】だからダメなんだよ……! リーダーシップゼロの岸田首相「危機感ゼロ」写真 ただ今回、議員会館に石破氏を訪ねたのは“恒例行事”になっている総理待望論について話を聞くためではない。元防衛大臣として、イスラエルとテロ組織・ハマスの戦争をどう見ているのか、展望を問いたかったのだ。 石破氏は「イランが加われば第三次世界大戦になりかねない」と懸念を示しつつ、「双方が主張するに正義があるが、グテレス国連事務総長が言うように、その正義を上回るのが『人権』です」と話し始めた。 「ネタニヤフ首相と会ったことはありませんが、報道で知る限り、かなりの極右つまり強硬派の政権であり、『政府の方が裁判所より上』だという姿勢も垣間見えます(イスラエルの最高裁判所はユダヤ人入植地の拡大を違法と見なしたが、ネタニヤフ首相は従わず、最高裁の判断を国会が覆すことを可能にする法律を制定)。イスラエル国内での支持率が低迷する中、今回の戦争で求心力が戻りつつある、とも言われています。『ハマスを根絶やしにする』という強硬姿勢を示すことで支持を集め、政権を維持しようとしているのかもしれません。イスラエルに限らず『戦争する内閣は強い』という傾向はあります」 イスラエル紙マアリブによると、今回の戦争以前は野党支持者がネタニヤフ首相ひきいる与党支持者数を上回っていた。開戦直後こそ、ハマスのテロを防げなかったネタニヤフ首相の責任を追及する声が上がっていたが、今では65%のイスラエル国民がガザ攻撃を支持しているという。 石破氏が続ける。 「2020年にアメリカのトランプ元大統領の仲介で、それまでパレスチナを支持してきたUAE(アラブ首長国連邦)とイスラエルが国交を結びました。サウジアラビアもイスラエルと国交を結ぶ準備をしていて、ハマスとしては『パレスチナ問題を忘れるな』という焦りを感じていたのではないでしょうか。 アメリカは本音ではイスラエルに手を引いてほしいと思っているはず。だからこそ停戦を促しているのですが、アメリカに住むユダヤ人の人口は500万人もあって、上院議員の10%がユダヤ人。政財界に与える影響は大きいのです。従来のアメリカはイスラエルとパレスチナの二国共存を軸にしていましたが、ユダヤ人の支持母体を持つトランプ元大統領は在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移すなど、ユダヤ寄りの姿勢を鮮明にしました。バイデン大統領は『トランプ政権よりもっとユダヤ寄りの政策じゃないと支持を失う』という難しい立場に置かれているのかもしれません」 石破氏は「ハマスを支援しているイランがどう出るかを、アメリカは注視している」と見ている。 「イランには核開発の経験、核兵器保有疑惑があり、イスラエルも核保有国です。イランが参戦すれば第三次世界大戦になりかねません。イスラエルのシオニスト政権には『ユダヤ人は神に選ばれた民である』という選民思想があり、イスラエルのゴルダ・メイア元首相も、かつて『世界中から同情されて滅びるくらいなら、世界を敵にまわして生き延びる』という発言をしています」 勿論、全てのユダヤ人が同じ思想を持っているわけではなく、イスラエル国内外でガザ停戦を願うユダヤ人達による反戦デモが起きている。しかし、シオニスト思想は過激で、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は米CNNのインタビューで「我々は残酷な非人間的な敵と戦っている。根絶せねばならない」と答えた。 石破氏はイスラエルに「国際法違反の疑いがある」と批判する。 「ハマスの戦闘員を攻撃するならともかく、イスラエルは『病院にハマスの本拠地があるなら、民間人を巻き添えにしても仕方ない』と主張して病院も空爆しています。これは国際人道法違反になるでしょう。そもそも、ガザ封鎖そのものも国際法違反の可能性が高いと思います」 ハマスのロケット弾による攻撃に対してイスラエルは自衛権を口実に空爆で対抗しているが、そこには比例の原則が働かねばならず、自衛権の行使であれば何をやってもいいわけではない、というのが石破氏の主張だ。 事前の警告のない民間人の殺戮、子供を含む数多くの民間人の死傷は国際人道法違反と断ぜざるを得ないとしている。そもそも、ハマスは国際紛争の当事者となる「国または国に準じる組織」ではないので、どれだけ被害が甚大でもイスラエルが行使できる権利は警察権であって自衛権ではないというのが石破氏のスタンスである。 「政財界においてユダヤの影響力が強い欧米とは異なり、日本はパレスチナ自治政府(PA)、イスラエル双方と親交があります。日本はどちらに対しても呼びかけのできる立場にあるはずです。オイルショックの時より国内のエネルギー自給率は下がっています。パレスチナに接近してアメリカに怒られたっていい。日米両国はより率直な意見交換をすべきです。そもそも、在日米軍基地なくしてアメリカの世界戦略は成り立たないのですから」 イスラエル建国時から続くパレスチナ紛争に解決の糸口はあるのか。 「イスラエルの建国の経緯を考えれば、国連が責任をもって解決する姿勢を見せるべきだと思います。スエズ紛争では国連が解決に大きな役割を果たしました。(1956年、エジプトのナセル大統領がスエズ運河の国有化を宣言し、イギリス、フランス、イスラエルがエジプトに侵攻。国連安全保障理事会でアメリカが撤兵を要請し、イギリス、フランスは拒否権を行使。アメリカは1950年に採択された議題を総会に移管する『平和のための結集』を利用して、緊急特別総会を開催し、停戦・撤兵の決議案が採択された)。国連が停戦監視団を派遣するような状況を目指すべきですし、私はその停戦監視団には日本も参加するべきだと思います。世論の批判はあるでしょうが、国際の平和と秩序の維持のために自衛隊を派遣できないなら、国連安全保障理事会の常任理事国入りなど不可能です」 今回の戦争で存在感を発揮できないばかりか、不祥事続出で超低空飛行を続けている岸田政権も石破氏は切り捨てた。 「さまざまな施策で賃金の上昇を促そうとしていますが、そもそもデフレの完全脱却を目標とするなら、物価高そのものには対策を打たないということになります。一時的に減税や給付金を出しても、それは貯金にまわるでしょうし、減税の財源は後の世代にたいする『借金』となります。安倍政権時代、『三本の矢』として大幅な金融緩和、財政出動をしましたが、それに続くはずの構造改革はほとんど手を付けられていません。 なぜ日本だけが生産性を伸ばせないのか、地方の潜在力を経済力につなげる政策をどれほど進められたか、イノベーションを阻害する規制はないか、逆に新たな技術に脅かされる権利はないか、こういったことを丁寧に整理し、施策として国民に提示すべきです。また、税制についても、憲法の要請である応能負担の原則に立ち返り、円安によって利益を得た会社や所得が増えた人から適正な税を徴収する方法、そして新しい価値観や社会制度にふさわしい税のあり方を幅広く議論し、国民に示すべきです」 日本の国際競争力は1989年からバブル終焉後の1992年までは1位を維持したが、金融システム不安が表面化した1997年に17位に急落し、安倍政権下の2019年以降は30位台が続いている。 だが、巨額裏金疑惑に揺れる巨大派閥の議員たちには、日本という国家を立て直そうとする余裕も気概も見られない――。 撮影・文:深月ユリア 慶応義塾大学法学部政治学科卒業。「深月事務所」代表。数々の媒体で執筆し、女優、モデル、ベリーダンサー、FMラジオパーソナリティーとしても活動。動物愛護活動も精力的に行い、テレビ神奈川の番組「地球と共生する、アニマルウェルフェア」を自社でプロデュース
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