「現場を愛し、愛されたい」「“芸能人”ではなく人間で在りたい」櫻井海音が俳優歴4年で確立した思考
あるタイミングで肩の荷がふと下りた
原作を読み始めた時から「もし実写化するならやりたいな」とずっと思っていたんです。だけど、まさか本当にアクアのオファーが自分に来るとは思っていなかったので、お話を聞いたときは驚きと喜びが同時にわき上がりました。もちろん主演という立ち位置に対するプレッシャーはありましたが、それ以上に「自分が大好きな作品で大好きな役をやれるというこのチャンスを手放したくない、他の人には渡したくない」という気持ちが強かったですね。 現場に入ってからもプレッシャーはありましたが、撮影期間中、あるタイミングで肩の荷がふと下りた感じがしたんですよ。ほかのキャストやスタッフも含めて、全部署の方々が同じ方向を見て、同じものを背負っているんだと実感したというか。 一人一人が【推しの子】に対する愛情やリスペクトの気持ちを持っていて、だからこそぶつかることもあるんですけど、そういうものが見えた時に「僕だけで作っているものではないし、僕だけが背負うものでもないんだな」と気づいたんです。 ――ご自身の撮影がない日でも、ずっと現場にいたそうですね。 とにかく原作が好きなので、一愛読者として「あのシーンがどういう風に実写化されているんだろう」と、自分がいないシーンが気になっちゃって(笑)。自分の撮影がない日でも、見に行きました。 僕のモットーは「現場を愛して、現場に愛されたい」なんです。それはこの作品に限ったことではなく、どの現場でもそうしようと思っていることです。 ――原作ファンとして、撮影中特に嬉しかったことは何かありましたか? 現場に赤坂(アカ)先生と横槍(メンゴ)先生が来てくれたことですね。「漫画家の中でもこんなフランクな人たちはいないよ」とご本人たちが自負されるくらいフランクな方たちで、「芸能界のこういうところを描いてほしいと思うことはない?」「実際はどんな感じ?」と聞かれたりしました(笑)。 ――アクアを演じるにあたって、ご自身の中で「アクアはこうだ」と思っていたものがあったのでしょうか。 それは常にありますが、そこにあまり自分の自我やエゴみたいなものはいれません。原作に対する愛とリスペクトを持ったキャストとスタッフが集まっていたので、「みんなで作っている」という実感もありましたし、好きだからこそ、原作に描かれているものを忠実に再現したかったんです。 例えば、ひとつのシーンを撮る前に原作の同じシーンを読み返して「ここでアクアはどういう立ち方をして、どういう表情しているんだろう」とか、どこでセリフが改行されているかを見て、そこで言い方を少し変えたりするなど、徹底して演じました。